これは、レオナルド・ダ・ビンチとほぼ同じ時代にイタリアのミラノで活動したアンロジオ・ベルゴニョーネの、イエスの12歳の時の出来事を描いた絵である。
中央に座っているのがイエスである。この絵で奇妙なのは、その下のイエスの左下にも、同じような姿格好の少年が見えることである。マリアと思われる女性がこの少年を迎えているので、この少年もやはりイエスであろうか。古い絵画の様式には、一つの絵に同じ人物を繰り返し描くものがあった。それは勿論、時間の経過に伴い別の場面に現れた同じ人物であると言うことである。これもその様な絵なのだろうか。
しかしよく見ると、この二人の少年は、似てはいるが同じ人物ではない。下の少年は中央の少年より少し痩せており、その頭のオーラや衣服の色も異なっている。
ここにも、二人の子どもイエスがいるのであろうか。
しかし、キリスト教の教えの中に、イエスが二人いたと言う考えは勿論存在しない。むしろ、その様な考えがあるとすれば、それは異端と言えるだろう。第2の少年は、やはりイエスではなく、イエスに関わる別の人間なのだろうか。だが、正典・外典をとおして、該当する人物は見当たらないのである。
ではこれがイエスとすれば、子どものイエスが二人いたとすれば、その根拠はどこにあるのだろう。ラファエロやベルゴニョーネは、どこからこのような着想を得たのだろうか。
このようなテーマを研究した文献はあるだろうか。日本にはない。しかし、外国には存在するのである。次回以降、それにも触れながら、さらにこの神秘を探っていきたい。