k-lazaro’s note

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「二人の子どもイエス」とは ⑥

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Hella Kruase-Zimmer "Die zwei Jesusknaben in der bildenden Kunst”

 以前、「二人の子どもイエス」のテーマを扱っている本として、デヴィッド・オーヴァソンの本を紹介したが、今回紹介するのは、ヘラ・クラウゼ-ツィンマー(Hella Kruase-Zimmer)とその本である。

  ヘラ・クラウゼ-ツィンマーは、彼女の著書による紹介によれば、1919年12月19日にポーランドのブレスラウで生まれ、演技と演劇論を勉強し、職業とした後、1945年からドイツのハンブルクで舞台とラジオ放送で活動。フリーの著述家として、ラジオと新聞に寄稿するかたわら、国内外で数多くの講演旅行を行った。建築家のエーリッヒ・ツィンマーとの結婚後、スイスのドルナッハに移住し活動を続け、2002年4月11日にスイスのバーゼルで亡くなったという。
 彼女が後半生を過ごしたドルナッハとは、ルドルフ・シュタイナーの創始した人智学運動の本部・ゲーテアヌムの所在地であり、シュタイナーを学んだ者には有名な町である。つまり、彼女はいわゆる人智学派の研究者なのである。従って、この本は、シュタイナーの説に基づいて、先行する人智学派の研修をもふまえて、著者独自の研究を加えてまとめた本ということになる。
 原書はドイツ語で、書名を訳せば「造形芸術における二人の子どもイエス」となる。デヴィッド・オーヴァソンの本と同じように、キリスト教美術の絵画等に隠された二人の子どもイエスの秘密を探っている。当然、多数の図版が掲載されており、一見普通の宗教画と思われた絵に隠された謎が解き明かされていくのだ。ただ、十分理解するには、多少人智学の知識が必要かもしれない。
 残念ながら、デヴィッド・オーヴァソンの『二人の子ども』の本もそうだが、この本も邦訳は出ていない。クラウゼ-ツィンマーにおいては、彼女の他の本も一切翻訳本がないが、デヴィッド・オーヴァソンには、他のテーマの本が何冊か翻訳出版されている。しかし、『二人の子ども』に限ってないのである。日本では、関心を呼ばないテーマと思われているのだろう。非常に残念である。
 どちらもまだ購入はできるので、ぜひ手に入れて読んでみてほしい。辞書を片手に時間をかけても読む価値は十分ある、と思っている。世界観がひっくりかえるだろう(自分がそうだった!)。