k-lazaro’s note

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「二人の子どもイエス」とは ⑧

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ベルナルト・ファン・オルリー(?)「聖家族」

 今回は、ヘラ・クラウゼ-ツィンマーの『絵画における二人の子どもイエス』から紹介する。

 上の絵は、ベルナルト・ファン・オルリーによるものと考えられる絵であるが、この芸術家は、ブリュッセルで1491年に生まれ、そこで1542年に亡くなった。彼は、ラファエロの弟子で、宮廷画家として、オーストリアの太守妃マルガレットとハンガリーのマリアのために働いた。
 さてこの絵に描かれている内容である。真ん中には、素朴で敬虔なマリアと、その膝の上に裸で美しいイエスがいる。彼女の左右の肩越しに二人の男性が覗きこんでいる。二人のどちらかがヨセフであろうと思われるが、二人の年齢層は違うようである。白い布を被った二人の女性が、若いマリアを挟んで座っている。その一人は、膝の前に子どものヨハネが立っているので、明らかにヨハネの母のエリザベトである。もう一人の女性は、やはり一人の子どもの上に、果実あるいは栗の入った籠を持っているが、この子どもは、子どもの年齢であるにも関わらず、書き物をして地面に座っている。この年取った女性は、おそらくマリアの母のアンナと思われる。
 右の子どもがヨハネであることは、彼が羊や十字架をもっていることによりわかる。羊や十字架は、人物を特定するための持ち物(アトリビュート)であり、つまりこの場合、洗礼者ヨハネのそれであるからである。その上、彼が乗っている石の台には、(見にくいが)「バプティスト(洗礼者)」と書いてあるからである。
 これに対して、左の子どもは誰なのだろうか。幼いのに書き物をしており、その知性の高さがうかがえる。勿論、翼がなく、天使でもない。
 では、右の子どものように、彼が使っている石の台に何か彼の正体を示す文字が書かれているのだろうか。ところが、何か書かれていると思われるその部分は、彼の体によって隠されているのである。作者は、あくまで、彼の正体を秘密のままにしておきたいようである。
 知る者のみが知る秘密。それは、彼が第2の子どもイエスであるということである。