k-lazaro’s note

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心臓はポンプではない ① 

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 シュタイナーの人智学は人間と宇宙の総体を視野においている。そこから来る認識は、従って、人間の精神(霊的)的側面だけでなく、魂的、また肉体的側面にも及んでいる。このような人間総体を把握する認識に基づき、いわゆるシュタイナー教育が生まれたのだが、医療においても同様に、人智学医療と言えるものが発展してきている。
 今回、取り上げたいのは、シュタイナーの心臓についての考えである。それは、表題にあるように、心臓は血液を送り出す「ポンプ」であるとする常識に真っ向対立する認識である。また、シュタイナーは、精神が新たな能力を発展させていくとしているが(精神の進化)、身体もそれに応じて進化していくと考えており、心臓は未来に新たな器官へと進化するとも語っている。

 シュタイナーの、心臓はポンプではないという考えは、初めて聞いた人にはひどく奇異に思えるだろう。心臓の鼓動や血管の脈拍は、まさに心臓が血液を押し出している感覚にぴったりだからである。だが、近代以前の人々は、心臓をポンプだとは考えていなかった。非物質的で精妙な生気(精気)が人体を動かしているという考えである。
 人智学周辺では、当然、これを検証する人々が存在してきた。常識、先入観に惑わされることなく心臓を巡る現象を観察すると、そこにシュタイナーの考えの正しさが見えてきたのである。
 それに基づき、いくつかの本が出版されているようである。先ず紹介していきたいのは、アメリカのトマス・コーワンThomas Cowan氏の『人間の心臓、宇宙の心臓』という本である(翻訳書はない⇒2023年5月に『ヒューマンハート•コズミックハート』という題名でヒカルランドから刊行)。

 トマス・コーワン氏は、医学博士で、栄養学、ホメオパシー人智医学、ハーブ医学など、医学の多くの主題について研究、実践してきており、ワクチン、自己免疫および小児期の病気などの本を執筆している。人智医学のための医師会の副会長を務め、家族経営農場などを共同経営している。
 ただ最近の情報によると、医師免許を放棄したと伝えられている。もともと病原性のウイルスを否定する立場であったが(シュタイナーの考えでもある)、新型コロナの原因について5G説を唱えたことなどから生まれた、「正統派」「体制派」の医療界との軋轢がその背景にあるのかもしれない。

 それでは、主にこの本に基づいて心臓の謎を追っていきたい。

血液を動かすものは何か?
ー『人間の心臓、宇宙の心臓』(トマス・コーワン著)より

 現在の一般的な心臓についての理解の基本となっているのは、イギリスの医学者、ウイリアム・ハーヴェイが1628年に出版した『動物における心臓の血液の動きに関する解剖学的研究』である。彼は、血液循環の研究、そして「心臓はポンプである」とする言説により最も重要な科学者、医学者の一人であるとされる。
 血液の循環には、動脈、静脈、そして毛細血管がある。血液は心臓から出て、大動脈、主要な動脈、細い動脈を通って行き、中間地点、即ち毛細血管に至る。毛細血管は、一層の血管で、そこで栄養とガスが、血液と細胞の間で交換される。この血管全体は、もし広げられれば、サッカー場をすっかり覆うことができる。更にすべての血管を全部つなげると、成人の場合はおよそ10万キロで、地球を2周半するほどの長さになるそうである。
 (既にこの時点で、本当に、このような長大な全血管に流れる血液の動きを心臓が作り出すことができるのかと、心臓ポンプ説には疑問を感じざるを得ないように思える。)
 血液は、その後、小さな静脈に入り、大きな静脈を通って心臓や肺に戻っていく。血液循環の目的は、酸素と栄養豊富な血を細胞に運び、それらの乏しい血液を心臓と肺に戻すことである。
 不思議なことに、語源的に、動脈arteiesは、アルスあるいは火星、 静脈はveinヴィーナス、金星に関連しており、地球ではなく宇宙との結びつきを示している。心臓は、古来、太陽と結びつけられており、男性原理と女性原理の間にある。血液循環の両半分は、原型的な病気のパターンをもっている。動脈は、主に男性に多い高血圧の場所であり、静脈には、女性に多い静脈瘤の傾向がある。
 血液が流れる速度は、比較的少ない支流につながる、大きな動脈と静脈で一番早い。毛細血管で一番遅いが、それはそれが非常に多いからである。それは、川に似ている。川が狭いと早く、支流に流れると遅くなり、湿地帯に至ると最も遅くなる。
 驚くべきことに、血液は、実際に、毛細血管で流れを止める。ガスや栄養を十分に交換する必要があるからである。しかし、血液は、循環の中間点で動きを止めると、またその時に、動き始めるのである。何が動きを生み出すのか? この時点で、血液に動きを与える心臓による推力はゼロとなるのであるから、それは、心臓ではあり得ない。

 ここで、コーワンは、水の特性を探求することが重要だとして、二人の研究者の研究成果に触れていく。

水の第4相

 私たちは、学校で、物質は、個体・液体・気体の状態で存在すると習った。物質はそのいずれかにあり、他の状態はないはずである。しかし、水はどうか? この3つの状態モデルを否定するのである。
 物質は、原子がより緊密に結びつき、密になることにより、気体から液体、固体に変わると習った。結果して、ある容量の液体は、そのガスの状態の同容量のものより重くなる。更に固体はより重くなる。例えば、液状の水銀は、ガス状の銀より重く、固体状の水銀は液体状の水銀に沈むのである。しかし、水だけは違う。固体の水つまり氷は、液体の水の上に浮くのである。もし、氷の方が重いなら、氷のできる地域で、水生生物は存在し得ないだろう。
 表面張力については、水と空気の相互作用で、水の表面の3ないし4つの分子の層の構造がより密に変化するからと説明されるが、水切りの石は、3ないし4つの分子を超えて水面に入りこんでスキップしていくのではないか。その説明が正しいとしても、その変化したものは、水なのかそうでないのか? 
 ここに新たな光をもたらしたのが、ワシントン大学の生物工学の教授であるジェラルド・ポラックGerald Polackである。

 ポラックは、水が、3つの相ではなく、4つの相で存在することを発見した。彼は、『The Fourth Phase of Water: Beyond Solid, Liquid, and Vapor』(邦題『第4の水の相 ―固体・液体・気体を超えて』ナチュラルスピリット刊)で、「第4相の水」について述べている。それは液体あるいはバルク水(溶質を溶かし込んでない時の水)と固体の氷の間の仲介者であるとする。第4相の水は構造水、ゲル相等とも呼ばれる。ゼラチンやプラスチックのような親水性の表面のものを水に入れると、それに接する部分に構造水のゾーンが形成される。その厚さは、親水性の物質の表面の電化と他の要素に依存する。この第4相は、ある温度(摂氏4度くらい)の時に、最も良く形成される。
 このことから、親水性の強い物質、特にタンパク質は、生命にとって大変重要な意味を持ってくる。細胞も含め、生物学的システムの大部分は、構造水の形にある。これが、細胞が、その約70パーセント水であるにも関わらず、水が漏れない理由である。細胞の細胞質は、細胞の内部構造を造る親水性のたんぱく質のために、ゲル(ゼリー)状である。
 構造水は、バルク水よりも粘着性がある。またフリー電子が豊富なので、マイナスに耐電している。これは、電圧計で、構造水の部分とそれに隣接するバルク水の部分を計るとわかる。
 もう一つの特徴は、pH値が異なることである。また構造水の分子の構造はより密である。最も重要なのは、外からのインプットが無くても、親水性の表面をバルク水に入れるだけで、親水性の表面に隣接して、異なるpH、電荷、分子構造(密度)をもつ構造水の層が形成されることである。
 親水性の表面をもっているものでチューブを作ると、その内部には、外から何のインプットもなしに、構造水の層ができる。すると電化がプラス・マイナスに分離し、内部のバルク水は、チューブの端からもう一方の端へと動き出すのである。もしこれを止める動きがなければ、これは無限に動き続ける。
 これは永久運動マシンである。現在、石油や重力、核を使って電気をつくっているが、ゲルのような親水性の表面によって電気ができると言うことである。(ポラックは、このことから、この原理に基づく発電システムも考案している。) ②に続く