宇宙の心臓
トマス・コーワン博士の『人間の心臓、宇宙の心臓』を引き続き紹介する。
今回は、本の題名にある「宇宙の心臓」についての章から、要点を引用していく。
病気の根は、私たちの周囲にある。それは、社会、経済、政治システムを含む。「宇宙の心臓」を理解することは、人類が今そこにいるより大きな文脈を解く鍵である。
医学大学時代の、人智学の教師ノーマン・デヴィッドソンは、世界を知るのに重要なのは、地球は止まっており、太陽や惑星が私たちの周りを回っていることを理解することであると語っていた。(太陽は、らせんを描いており、惑星は、太陽のらせんの道に引き寄せられている。)
地球中心説の人々
・数千年の間、サステナブルな社会に生きてきた。
・惑星、動物、土壌等を含め、環境の健康を改善してきた・・・太陽中心説の人々
・サステナブルでない社会に生きている。
・生命界の健康を低下させてきた ・・・
ここで言う地球中心説(天動説)は、勿論、物理学で言うそれではない。人間個人個人を中心において世界を見ると言うことである。それは近代において否定された思想であるが、それに基づき生きていた人々はむしろ自然や宇宙と調和した生活をしていた。自分の存在の意味も無意識的に感じていたのである。しかし、太陽中心説(地動説)に転換したことにより、そのような感覚は失われ、人の霊性の感覚も失われていき、人は、自身を物質世界の一部分に過ぎないと思うようになっていったのである。シュタイナーは、地動説は、ルシファーの人類への攻撃であると語っている。
なお、太陽と惑星の軌道についての文章は、太陽の周りを惑星が単純に周回しているという一般的な太陽系の姿は、実際のものと異なっていることを意味している。太陽自体が猛スピードで動いており、惑星はそれと一緒に移動しているからである。ネットには、直進する太陽の周りを螺旋軌道している惑星の動きを描写している動画も見られるが、シュタイナーは、太陽の動きも直線ではないとしているようなので、惑星を含む真の太陽系の軌道はかなり複雑なようで、実は、これらの動画も真実ではないようである。これについては、いずれ新たに項目を設けて解説したいと思ってい。
人の心臓の力、活動は、より大きな宇宙のそれらと同じ、あるいは関係している。心臓の形は、中心から左に36度より少し多く傾いて立方体の中に置かれたチェスタヘドロンにより可視化されることを私たちは見た。それは、胸にある心臓と同じ角度である。そしてそれは、人間の体温の平熱(摂氏)にほぼ同じである。思いやりのある人は、「Heart 心臓(心)の温かい人」と言われる。人の温かさは、実際に心臓から来るのかもしれない。HeartMath Instituteの研究は、心臓が体の指揮者のように振る舞っており、他の臓器は、心臓のリズムに合わせていることを示している。これにより、様々な臓器が1つの、生きているシステムに統合されているのだ。
人は、平均、1日に25,920回呼吸する(平均18回/1日×60分×24時間)。太陽が獣帯の12宮を一周するのには、同じ数の年を要する(プラトン年)。太陽は、獣帯を、72年で1度動く-それは、人間の平気寿命である。この72年に、およそ26000日がある。呼吸の吸い込みと吐き出しの各サイクルの間に、過呼吸を防ぐ少しの休憩がある。冬至・夏至の時、太陽は一時休止する。それから(地球から見て)反対方向に動き出すのである。
これらの計算は、宇宙の地球中心説―人が宇宙の中心に立つときに体験できるものーに由来する。それは、シュタイナーが、何度も何度も原型、あるいは「完全な」リズムとして強調したものである。人間ーそして心臓と肺の律動システム(鼓動と呼吸)ーは、1:4の比率、「創造」リズムの中にある。
この視点は、人々に、各個人にとっての、根を下ろしている感覚、視点、唯一無二の感覚を与える。すべてのものが、それぞれ、宇宙の中でユニークな場所と役割を持っているのである。それは、信頼と安心の視点でもある。地球中心説の人は、宇宙の秩序の中で場所と他の存在に結びついていることを知っている。それは、我々が、そこに向かうように努力すべき理想である。
勿論、太陽が地球の周りを回っていると言っているのではない。人類と心臓と、そしてより広大な宇宙の関係を認め、それらを癒やすために働くなら、私たちは、愛と信頼、安心、健康の新しい場所に至ることができることを、示しているのである。
人体の構造やリズムは、宇宙と共通しているといことである。ここに出てきたプラトン年は、神秘学では重要な概念である。春分点が地球の歳差運動によって黄道を一周するのに要する時間であり、それは時代の区切りを意味する。宇宙も人間と同様に、誕生と成長そして死滅という歩みをするのである。
「太陽は球体ではない」の項で、「ミクロコスモス(人間)とマクロコスモス(宇宙)は、照応しているという。あるいは、「 As above, So below(上なる如く、下もまた然り)」という神秘学の教えがある。世界は、まさにこの言葉の通りであると言うことであろう。」と書いたが、ここでも人と宇宙の照応関係を垣間見ることができる。
地球中心説とは、自分(人間)と宇宙が一体であることに基づく立場である。人間はそれぞれが宇宙と一体であるのだから、人は誰であれ等しく尊いのである。決して、単なる「土くれ」ではない、機械ではないのである。