k-lazaro’s note

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影のブラザーフッドーロシア問題の背景ー ①

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 現在、ロシアの「ウクライナ侵攻」問題がマスコミを賑わしている。ロシアが、ウクライナへの侵攻を準備しているとアメリカが主張しているのだ。一方で、当のロシアのが否定しているのみならず、西側の専門家にもそれを否定する者がいる。実際、ウクライナの大統領自身が、危機をあおることに反対している。
 確かに、ロシアにそれを行う意図はないだろう。ロシアは、自国の安全保障上から、隣国ウクライナへのをNATOの進出を問題にしているのである。ソ連アメリカの近くのキューバにミサイルを配備しようとしたことにより、米ソが戦争一歩手前まで至ったキューバ危機の裏返しなのである。
 ロシアは、他国を侵略したり、占領することは考えていないと思われる。むしろ、話しは逆で、西側に、ロシアを攻撃する意図が見えることが問題なのだ。その布石がNATOの旧東側諸国への拡大なのである。
 しかし、ロシアに現在その考えはないにしても、強引にNATOが進出したり、ウクライナのロシア語を話す人たち、ロシアに親近感を抱く人々への弾圧などが行われれば、ロシアも動かざるを得ないだろう。危機が存在しないとも言えないのだ。
 そもそも冷戦時代に東西で対立があったのはわかるが、冷戦が終わってもなぜ西側、特に英米はロシアを敵視するのだろうか? 1つの理由は、軍産複合体の利益のためであろう。それが存続するには、「敵国」が必要だからである。あるいは、経済的にもその地域を支配下に置きたいという欲望であろう。
 だが、実は、その背景には、より深い意味がある。それは、表面的な歴史の背後に存在する深い闇に発するものである。
 シュタイナーは、その闇に潜む勢力について指摘していた。今回は、多少古い記事のようだが、この問題を簡潔に述べている文章があるので紹介したい。
 それは、「影の兄弟達ー陰謀への1つの観点 Brothers of the Shadows  A Perspective on Conspiracies」と題されており、著者は、セヴァク・ガルベキアンSevak Gulbekianという方である。もともとは、2004年に「New Dawn」という雑誌に掲載されたらしい。ガルベキアン氏は、シュタイナー、人智学関係の書物を出版している出版社の社主及び主任編集者であるようである。
 今回から2回に分けて掲載することとする。訳者の注は、途中に※印で加えておく。

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影の兄弟達(ブラザーフッド

 ゴア・ヴィダルはその著書『Perpetual War for Perpetual Peace』の中で、アメリカ国民は「陰謀」という言葉に対して、にやにやと笑いながら反応するように仕向けられてきたと指摘している。言い換えれば、陰謀は気違いや一匹狼のためのものであり、まともに取り合うべきものではないのだ。このように、メディアが陰謀という概念を周辺にあるものや極端な要素と結びつけることによって、本当の陰謀家が気づかれないようにしているのだと彼は主張する。

 ヴィダルは、政治家、FBI、タバコ会社のロビイストなどによる真の陰謀を、勇気を持って追い求め、暴露しているのである。しかし、陰謀のコインの裏側には、電子メディアの助けを借りて、数秒で世界中を駆け巡る空想的でファンタスティックな理論の拡散があるのだ。

 インターネットの普及は、陰謀論民主化した。何百万人もの人々が、何が起こっているのかについて自分たち独自の分析を発表する手段を手に入れたのであるこのように個人のデジタル出版が大規模になった結果、ゴミの中から真珠を見つけることが難しくなっているある人は、「インターネットの時代には、何かを秘密にしておきたいなら、それを公開することだ」とも言っている

 UFOや銀河系トカゲなど、よりファンタジックな説の中にあって、現在入手可能な大量の「陰謀論」資料の中には、ある核となるテーマが常に繰り返し登場する。その代表的なものは、影のエリートが単一の中央集権的な世界政府の援助を受けて、人類を奴隷にしようとしているという考えである。イルミナティ」という謎の集団の名前は、このような集団と最もよく結びつけられているが、その意味するところはしばしば不明確である。イルミナティとは、銀行家、政治家、実業家のトップ集団で、前述のような万能の政府を作ろうとしている、とされている。

 その真相はどうなのだろうか。ここでは、その答えを述べることはしないが、ルドルフ・シュタイナーの研究から、このテーマについて、一般にはあまり真剣に検討されてこなかった観点を紹介したいと思う。記事の後半では、シュタイナーの考え方を、より身近な他の陰謀論研究と関連付けることにしよう。

 では、なぜシュタイナーなのか? 他に理由がなくても、彼の教えや指示に基づき、新しい種類の教育を提供する何千ものウォルドルフ学校、バイオダイナミクスを成功裏に実践する農場、アントロポゾフィー医学を調剤する診療所などが、実践として生まれているからである。

 シュタイナーは、偉大な透視能力者として、人間の状態を洞察するために現実の他の次元を調査することを主張した。彼の遺産は、何百冊もの講演や著作で、さまざまなテーマで出版されている。しかし、前述のように、他の多くのスピリチュアルな教師や教祖のものとは対照的に、彼の仕事は人生のあらゆる領域で実用的な応用が可能であることを示している。このことは、彼の著作が真実であることの究極的な証拠にはならないが、聖書の "By  their fruits shall know them "(彼らの果実が彼らを知らしめる)という言葉に相当する。

 1916年と1917年、壊滅的な第一次世界大戦のさなか、シュタイナーは中立国スイスのドルナッハのセンターに集まった彼の信奉者のグループに対して、25回の連続講義を行った。この講演は、その後英訳され、出版されているが、現代の出来事をユニークに読み解いている。

 シュタイナーは、世界情勢の裏側では、オカルト集団や「兄弟団(ブラザーフッド)」の策略が働いていることを示唆したこの兄弟団は、第一次世界大戦が起こることを望んでおり、それを実現するために出来事を操っていた。その目的は、英語圏の経済的優位を守り、ドイツやオーストリア・ハンガリー帝国など中欧の大国の「仲介役」をつぶすことにあった。

※ドイツなどの中欧の諸国は、西側の米英等と東側のロシア等の諸国・民族を霊的に仲介する役割を担っていると、シュタイナーは考えていた。それによってこそ、人類の霊的進化の道がひらかれるのである。

 これらのオカルト兄弟団は、特定の目的を達成する手段として「ロッジ」に集まり儀式的な魔術を行う人々の小集団で、英語圏アングロサクソン)から生まれ、特に英米の利益と結びついていた。彼らの目的は、英米の影響力を世界中に拡大し、英米文化を優位に立たせることであった。さらに、その優位性を遠い未来にまで拡大すること、つまり、現在の状態を永遠に継続させることを目指したのである

 シュタイナーの研究によると、人類の進化は「大きな期間(great periods)」を経て発展していく。シュタイナーの研究によると、人類の進化は「大きな期間」を経て、それぞれの時期に、特定の民族が精神的な意味で人類をリードする任務を与えられている。何千年にもわたって、さまざまな民族が、特定の資質を、慈悲深い方法で、人類全体にもたらすことを運命づけられてきたのである。歴史のある特定の時代は、このように特定の国によって導かれるのである。これは政治的な支配や帝国を意味するものではなく、国家や人種の優劣を論じるものでもなく、精神的な権威のあり方を指している

 シュタイナーは、西欧諸国、特に英語圏の人々は、物質世界を理解すること、つまり地球上で快適に過ごし、それと調和して発展することを使命としている、と示唆したのだ。このような意味で、西洋はある種の(有益な)唯物論を人類の発展に導入することになった。

  しかし、この唯物論は、ある時点までしか発展させることができないものであった。人間が完全に地上世界の一部となり、個人化された意識(「I 自我」)を導入するのに必要なものであった。しかし、それ以上になると、破壊的なものになる可能性があった。シュタイナーは、「魂や精神の可能性を閉ざす哲学としての唯物論は、人類の進化に逆行するものであり、悪として働く」と断言した

※ 唯物主義の発展は、人類の進化の上で必要であり、予定されていたものであったが、それに歯止めがなくなると、むしろその進化に悪い影響を与えるものであった。実際に、悪の勢力がそこに巣くったのである。

 人類を支配しようとする英米の兄弟団は、このことを知っているから、今日、意図的にさまざまな種類の唯物論を後援して、人類をその発展の現段階に止め、閉じ込めようと考えているのである。彼らは、人間が物質世界に没頭している現段階を超えて進歩することを望んでいない。言い換えれば、彼らは私たちが自由な方法で私たちの霊的な「自我」と再びつながることを望んでいないのである。人間の進歩は霊的な知識に依存しているので、オカルト兄弟団はそれに反対するように働く。

※ 人類は、やがて「霊我」と言われる霊的要素を自らの内に発展させていくとされる。英米の兄弟団は、これを阻止しようとしているのである。

 シュタイナーはさらに、兄弟団はスラブ民族が次の歴史の「偉大な時代」に人類を代表して指導する任務を与えられることを認識していると説明した。そのため、英米の兄弟団は、現在の人類発展の偉大な時期を支配しようとしただけでなく、スラブ人が将来重要な使命を負うことを知って、現在のスラブ人(特にロシア)を支配して、彼らの来るべき任務を妨害、あるいは停止させようとしたのである。このようにして、英米の兄弟団は、人類の発展に対する支配力を遠い未来にまで拡大することができたのである。

 シュタイナーは後に、ロシアにおけるボルシェビキ革命は、ソビエト連邦の創設とその諸民族の文化的、知的、経済的、政治的抑圧につながったが、この地域と諸民族の支配の手段として、同じ兄弟団によって計画、支援されたと主張している

※ レーニンロシア革命の背後に、英米の大財閥の支援があったのは、歴史的事実である。そして、ロシアに対する攻撃は現在も続いている。それは、実は、人類全体の未来の覇権を巡る戦いである。

 シュタイナーの分析の根拠は何であろうか。何はさておき、世界情勢の現状と、シュタイナーが1916-17年にこのテーマについて話して以来、英米の文化が(英国の政治家の熱心な支持を得て)米国の経済・政治影響力と一体になり、世界を支配するようになったことは興味深いことである。2003年のイラク侵攻の際、世界的な反対を押し切って米英が一方的に軍事行動をとったことは、この強大な力が働いていることの良い例であった。しかし、これらの観察が厳密な意味での「証拠」にはならないことは認めざるを得ない。

 他のソースは、キャロル・クイグリー教授Carroll Quigley (1910-77)の驚くべきリサーチである。彼は、セシル・ローズの事業から生まれた秘密のネットワークについて、『英米の体制』(1949年)と『悲劇と希望』(1966年)の2冊の大著を著した。政治、文化、社会生活への影響力を持つこの集団の力を、クイグリーは「恐ろしい」と評している。

 クイグリーは、狂信的な陰謀論者ではなく、ジョージタウン大学教授であり、ビル・クリントンの師でもあったということは重要なことである。(このようなネットワークが、シュタイナーの言うブラザーフッドとどのように関連するかは、後で考えることにする)。

  他の著者もクイグリーに倣い、彼の研究を現代の観察で補完している。しかし、ここでは、少なくともシュタイナーの診断の状況証拠となる2つの外的な「症状」のみに言及したい。

 1893年C.G.ハリソンというイギリス人が、「キリスト教秘教主義者」の謎めいたグループであるベレアン協会で6回の講義を行った。これらの講義の記録は、ハリソンの驚くべき著書『The Transcendental Universe(超越的宇宙)』に掲載されている。ベレアン協会やハリソンについてはほとんど知られていないが、彼は生前にさらに2冊の本を書いている。はっきりしているのは、「高」教会(イングランド国教会の宗派)を擁護する発言をするハリソンが、驚異的な秘教思想の蓄積にアクセスし、さらにある種の内部知識にも通じていたことである。

  第2回目の講義で、彼は「次のヨーロッパの大きな戦争」だけでなく、スラブ民族の「国民性」とその能力についても語っている。

 「西ヨーロッパでは数え切れないほどの困難をもたらすであろう社会主義の実験を、政治的、経済的に行うことができるようになる」。

 この講演が行われたのは1893年第一次世界大戦の21年前、ボルシェビキ革命の24年前であることを忘れてはならない。

 ハリソンは「理論的オカルティスト」であり、「実践的オカルティスト」ではないと主張している。つまり、魔術や儀式を行わず、彼自身が「ロッジ」のメンバーでもなかったことを示唆しているが、彼の作品から、彼が英国の体制を明確に擁護する秘教的思考の系統を代表していることは明らかである。

※ 儀式を行う「ロッジ」のメンバーとは、フリーメーソンのことであろう。

   20世紀の大半をロシアとその周辺国家に支配されることになる「社会主義の実験」とともに、来るべき戦争について、どうして彼が知っていたのだろうか。もし、彼自身が「実践的オカルト研究家」でなかったとしても、そのような人々と接触し、上記のような秘密集団の悪意ある計画を知ることができたと考えるのが妥当であろう

 シュタイナーが主張する世界政治へのオカルト的干渉を裏付ける重要な証拠の第二は、1890年のクリスマスに発行された風刺週刊誌『The Truth』の特別版に見られる。この週刊誌は、「カイザーの夢」という見出しで、ヨーロッパの地図を漫画で紹介し、ユーモラスな解説を加えている。

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  この地図には多くの指摘があるが、上記との関連で最も適切な指摘は、ロシアとその近隣諸国を除いてヨーロッパのすべての国が共和国として示されており、その上に「ロシアの砂漠」という文字が書かれていることである。さらに、ドイツは「ドイツ共和国」と書かれている。

  この地図は、ロシアが文化的にも経済的にも「砂漠」になることを予見していただけでなく、ドイツが将来「共和国」に分割されることを、ハリソンと同様に予見していたことを意味している。この雑誌の編集者、アンリ・ラブシェールはフリーメイソンであった。彼の先見の明は幸運だったのか、それともまたもや世界を形作る将来の計画について何か内部情報を持っていたのだろうか。

 もちろん、上記の例が単なる偶然や幸福なフロックである可能性もあるが、その可能性は低いだろう。では、これらの例は、政治を操る悪質な計画を持つオカルト的な兄弟組織の存在を示す証拠なのだろうか? それを確実に知ることはできないが、シュタイナーの視点は、現在の世界情勢を理解する上で、多くの重大な示唆を与えてくれることは確かである

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 以上が前半である。後半は次回に続く。
 なお、上記の「カイザーの夢」の地図に関わる背後の状況については、以前紹介したテリー・ボードマン氏が、ガルベキアン氏と同様に、シュタイナーの示唆に基づき、それをテーマとする本を出している。