k-lazaro’s note

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第6文化時代を巡る戦い-ロシアとウクライナの運命-②

 

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スタラヤ・ラドガ(ノース人のサガで「アルデイギュボルグ」(Aldeigjuborg)と呼ばれているロシア北西部の古代の街)

   最近、ロシア国営通信がロシアの「勝利記事」の予定稿を誤送信したとする情報がながれている。一旦流れたものが後で削除されたということで、フェイクとは言えないようだ。何らかの間違いがあったのだろうが、その主張は大筋で実際にプーチンの考えに沿っているのだろう。そこに、今回の軍事行動についてのプーチンの真意が読み取れるということで、それに基づき盛んにプーチンへの批判がされている。

 確かに軍事行動は批判されるべきものだが、この記事で主張されていることには、理解できることもあるのだ。それは、「冷戦終結以降の国際秩序を変える」との主張である。それは米英による支配秩序である。ソ連の崩壊後、それに挑戦しようとする者(国)は、容赦なく痛めつけられてきたのがその後の歴史である。世界の真の平和、世界の国々の共存共栄のためには、その秩序は変えられなければならないのだ。

 さて、個人的に今回の国営通信の記事で面白いと思ったのは、プーチンが米英を「アングロサクソン」と民族名でひとくくりにしていることである。これまで今回のウクライナ危機関係のこのブログでも幾度か出てきた言い方である(シュタイナーは、「英語を話す人々」というような言い方もしている)。

 プーチンは、ロシアの民族的アイデンティティーにこだわりをもっているようなので、米英についてもその流れで表現したのかもしれない。しかし、ロシアの民族霊が、プーチンにその様に語らせているのかもしれないとも密かに思っているところである。

 このようなことを背景として、今回は(今回も)、シュタイナーの米英世界のオカルト集団についての記事を紹介したい。シュタイナーの考えが簡潔にまとめられているという。

 シュタイナーの文章の前後に、人智学派の方の解説文が付けられている。このうちニコラス・ドッドウェル氏についてはよくわからないが、トーマス・マイヤー氏は人智学関係の多数の本を出版しており、社会問題、歴史問題等に造詣が深い方である。 

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ルドルフ・シュタイナーの基本的な示唆と現代の国際政治との関連性

 

  1. はじめに

 以下の文章は、第一次世界大戦末期の1918年に書き留められたと思われるルドルフ・シュタイナーの私信である。スイスのドルナハにあるルドルフ・シュタイナー出版社のシュタイナー完全版(「Gesamtausgabe」)にはまだ印刷されていない。このノートは、ペルセウス出版の月刊誌「Der Europäer」(「The European」)の創刊3年目、1999年3月の第5号、3頁(コソボ戦争の直前)に全文が初めて掲載された。

  そこには、英米世界のオカルト集団の存在に関するシュタイナーの啓示が、短く、非常に濃縮されて、しかも非常に明確に要約されており、それは何十年にもわたって世界政治の行方を決定的に左右してきたし、今もなお影響を与え続けている人智学に詳しい人なら、シュタイナーがこの頃、アントロポゾフィー協会の会員を対象にした数多くの講義の中で、特に "Zeitgeschichtliche Betrachtungen... "で取り上げた話題と同じであることがわかるだろう。

 シュタイナーの「精神科学」や人智学の知識があまりない人にとっては、このノートの内容は実に奇妙で異常なものに感じられるだろう。シュタイナーは「アメリカ」や「イギリス」そのものに対して言っているのではなく、この世界の中で、エゴイスティックで特殊な目標を追求しているオカルト集団に対して言っているのだということを、まず指摘しておかなければならない。そのため、彼らは人類全体の真の発展に反している。オカルト集団は、この大義を推進するのではなく、真の英米の「使命」を変質させているのだ

 シュタイナーは人智学の中で、常に全人類の進歩のために必要なことを提唱し、人類全体の犠牲の上にしか追求できない特定集団のエゴイスティックな目標と闘う彼がドイツとスラブ民族の協力を提唱し、西洋のオカルト集団による東洋文化の「教育」に反対しているのは、まさにこのためである

 このように、人類が分断されているさまざまな民族や国家の精神(霊)的な「性格」、あるいは「使命」というファクターは、世界政治において通常このように考慮されることはない。しかし、サミュエル・ハンチンドンの『文明の衝突』のような著作は、そうあるべきことを示唆しているのかもしれないシュタイナーの主張は、こうした「国民性」のリアルな、しかし秘密の知識こそが、オカルト集団が世界政治を操る根拠になっているというものだ。この「国民性」も考慮に入れてこそ、この集団にうまく対抗することができる。シュタイナーは、1910年の講義シリーズ "Die Mission einzelner Volksseelen ..." (「ある「民俗魂」の使命...」)、において、ある種の国民性を正しく描写している。

 このようなシュタイナーの示唆をどこまで信用するかは、シュタイナーの教え全般をどこまで信用できるかによるだろう。・・・忘れてならないのは、イニシエイトとして、彼は自分が他の人々に語ったことに大きな責任を感じていたことである。彼の、「偶然」あるいは「本心からではない」発言を見つけることは期待できない

シュタイナーの発言は、公平で客観的であり、全人類の進歩を促進を求めていることを主張しているのである。

                        ニコラス・ドッドウェル

  1. ルドルフ・シュタイナーのテキスト

人類の胎動する未来文化をめぐるロシアでの闘い

今日の人類の発展の基調を定めようとするグループが存在する彼らは資本主義経済の機動力を利用して地球を支配しようと考えている。この集団は、経済的手段によって、その目的のために人を縛り、利用することができる(「組織化」する)。本質的な要因は、このグループが、ロシア領土の地域には、未来に関して、まだ形成も「組織化」もされていない人々が存在することを知っていることであり、それは、将来の社会主義者の発展の芽生えたばかりの衝動を含んでいる。明確な目標は、この萌芽的な社会的衝動を反社会的集団の支配下に置くことである中欧が、芽生えつつある東方の衝動を正しく評価し、それに共感し、それと一体化しようとするならば、この目標に到達することはできない。このグループが英米世界の中に位置するためにこそ、現在の同盟関係が生まれたのである1)。それは、本当の対立や利害をすべて隠す従属的な要素である。特に、英米の「プルートオートクラート(冥王星貴族)」2) と中欧の人々の間で芽生えつつある、ロシアの文化的衝動を誰が導くかという争いが起こっているという真の事実が隠されているのである。中欧がこの事実を世界に明らかにした瞬間、真でない状況は、真の状況に取って代わられるであろう。それゆえ、戦争は、ドイツ人とスラブ人が、西洋のくびきから人類を解放するという共通の目的をもって結合するまでは、何らかの形で、長く続くであろう

 二つの可能性だけが存在している。一つは、次のように語り、成功するには、アングロ・アメリカが犯さざるを得ない嘘の仮面を剥がすことである。「英米大義の指導者達は、フランス革命以前に生じた衝動に由来し、資本主義が提供する権力手段を通じて世界の支配を達成しようとする運動を推進している、この支配を達成するために、これらの指導者は、革命の衝動を利用するが、それは空文句であって3)、彼らの真の動機を隠しているに過ぎないのだ」と。そうでなければ、もしこれをしなければ、いつか将来、隷属したドイツ・スラブ領土から発する、血の川を通って、地球の真の精神的目標が救われるまで、英米世界の中のオカルト集団に世界支配を明け渡すことになるのだ。

                  ルドルフ・シュタイナー

1)(第一次世界大戦中の)イギリスとロシアの同盟:それはロシアを西側の教育的支配下に置こうとする深い意図を隠している。

2)シュタイナーのこの言葉は、「プルトクラット」(富によって権力を行使する者、冥王星は富と金の神)と「オートクラット」(分割不可能な権力を行使する独裁者)を組み合わせ強調したものである。

3)このような「空文句」は、例えば、世界人権宣言の第1条である。「すべての人は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。彼らは(中略)友愛の精神の下に集う。" (タイトルと注釈はTh.Meyerによる)

  1. トーマス・マイヤー氏による編集部コメント

 R.シュタイナーのこの基本的な指摘は、20世紀にヨーロッパで起こった、そのほとんどが戦争的な性質のものであった数々の出来事を理解するのに役立つものである。1917年のいわゆる「ロシア革命」によるロシアでの「社会主義実験」の開始、第二次世界大戦後のドイツと中欧の分裂、1982年以降のワシントンとカトリック教会の扇動による「社会主義実験」の中断、1990年の統一後の、欧州連合NATOへのドイツの拘束、そして最近ではバルカン諸国とコソボにおける戦争がそれである。これらの出来事は、欧米の特定のサークルが、長期的なオカルト的政治戦略に基づいて、米国の政策、特に外交政策に具体的な影響力を行使していることを考慮に入れなければ、真に理解されることはないだろうシュタイナーのノートには、一方では中欧、他方ではスラブ東欧ーアトランティス後の人類第6の文化的エポックの発祥地ーに関する英米西側のこの戦略の実際の鍵が、凝縮された形で示されているのである

 1893年には、すでにイギリスのオカルティスト、C.G.ハリソンが、西側世界のこうした計画に注意を促していた。シュタイナーは彼の著作『超越的宇宙』1) をよく知っており、何度かコメントを寄せている。ハリソンは、オカルト的な原理で動く西洋の政策が設定した目標の数々を、特定の国家や民族の性格や将来の発展との関連で、明確に名指ししてさえいるのである。幸いなことに、これらの目標は達成されるには程遠いが、それゆえに、それらは依然として非常に真剣に受け止めなければならない。

 ある西洋の政治家や経済指導者がこれらの遠大な目標に着手しているかどうかはほとんど問題ではない。重要なのは、彼の行動が目標を推進するかどうかである。

 このような目標を進めるための効果的な制度として、長い間、アメリカのイェール大学の「スカル・アンド・ボーンズ」クラブがあったこのクラブのメンバー(銀行家で外交官のアヴェレル・ハリマンのほか、ジョージ・W・ブッシュ大統領とその父、ジョージ・ブッシュ・シニア元大統領が所属)は、まず左派と右派の両方の政権を推進し、それらを経済的に支配して互いに対抗させることを目的としている。1917年のロシア革命にも、ヒトラー第三帝国にも、「英米の富豪」から重要な、しかしあまり知られていないつながりがあったことは偶然ではない。従来の20世紀史が無視してきたこれらの事実は、アメリカの歴史家アンソニー・サットンの著書「ウォール街ボルシェビキ革命」2)、「ウォール街ヒトラーの台頭」3)において初めて明らかにされたものである。中欧のどこよりも,世界政治の現実を見抜く力を磨くために必要な本であるにもかかわらず,どちらもドイツ語には翻訳されていないのは,たいへん残念なことである。また、サットンは、「スカル・アンド・ボーンズ」クラブの国際的な活動に最初に注目し、現在もその活動を続けている。これらのつながりは、彼の著書「英米エスタブリッシュメント」4)において、確固たる証拠によって裏付けられている。

 このような危険な政治的意図は、人類全体の福祉に向けられたものでないことは確かである。この問いは、ラルフ・ウォルドー・エマーソンの著作の中に答えを見出すことができる。エマソンは、エゴイスティックな目標を掲げて視野を狭めた母なる大陸のあらゆるオカルティストたちよりも、結局は長く生き続けることになるのである。彼の思考と感覚は、人類と宇宙の永遠の法則の領域に達しており、それはすべての男女が把握し経験することができるもので、権力の誘惑に負けた少数の人々の一時の利益を超越したものである。

  西洋は何よりも、その偉大な息子の一人であるエマソンから、真に永続的な「長期計画」の唯一の源泉は、永遠に真実で永遠に善であることを学ばなければならないだろう

1)新版1993,Hudson,New York. ドイツ語版。シュトゥットガルト1989年。シュタイナーがハリソンに言及している講義は2つある。完全版(以下GA)184、(1918.9.7)、GA174a(1916.3.18)。

2)モーリー(オーストラリア)1981年。3)サドベリー(イギリス) 1976年

4)ビリングス(米)1986年。

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 こうした文章で注意しなければならないのは、例えばアングロサクソンと言う言葉を使っていても、アングロサクソン系の一般の人々を批判しているのではないことである。あくまで道を外れた「左手の」個人、グループが問題なのである。彼らは、アングロサクソン民族が支配民族であると考え、他の民族を見下し、その勢力下に置くことを当然視しているのである。

 また「民族」について語るのは、そのカルマや進化の歴史における使命が問題だからであり、民族と個人はまた異なる存在であることはいうまでもない。人智学の立場で重要なのはあくまでも個人である。個人意識(自我)、自由の意識を発展させることが現在の人類に求められている。そしてそれは、自分以外の人間も、自分と同じように尊重すると言うことである。その場合、むしろ自分の属する民族と対立することもありうる。決して民族至上主義なのではないのである。

 「民族の使命」というようなことを語っていることから、あたかも各民族に上下の関係をおいているかのように考えられ、シュタイナを差別主義者として批判する者もいる。しかし、上に述べたように、それは誤解である。

 ただこの問題がナーバスな要素を含んでいることは間違いない。一部をとらえて、歪んだ情報を流すようなことがあってはらないのだ。