k-lazaro’s note

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自由を巡る闘い(後半)

ジャンヌ・ダルク


 この項目の前半では、第1次世界以降、現代までの歴史的経過が語られた。後半ではそれらの霊的背景が語られる。

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自由を巡る闘い(後半)

 

 この記事の前半では、歴史的な出来事から読み取れる自由への闘いの側面が紹介された。以下、この闘争の秘儀的背景の側面を指摘する。そのためには、一見無関係に見えるある事象に立ち戻る必要がある。

 

ブッダのかつての天使

 紀元前483年、ゴータマ・ブッダは悟りを開いた後、この世を去った。このとき、彼は肉体面での最後の転生を終えたのである。天使はもう同行する必要がなくなり、他の仕事に回れるようになった。その天使は、特に、9世紀に、重要な教皇であるニコライ1世にインスピレーションを与えた。教皇が、その死後、1054年にいわゆる教会分裂として行われることとなった西方教会東方教会の分離を準備するためである。(訳注)

(訳注)ブッダとは、涅槃に達したものであり、それは今後、現世に肉体を持つ必要がなくなったことを意味する。歴史上のゴータマ・ブッダは、シュタイナーによれば、実際に、それ以降、受肉することなく、霊界から人類に働きかけたという。またすべての人に「守護天使」がついており、人が知らないうちにその人を導いているのだが、涅槃に達したブッダには、もはや守護天使が必要なくなったのである。このような天使は、それ以降、別の使命を果たすようになるという。

 

 ニコライの重要なアドバイザーであったアナスタシウス・ビブリオテカリスは、今後の展開について大きな概観を有していた。彼はよくニコラスに言ったものだ。「霊はヨーロッパから退くが、ヨーロッパの人々は後で彼らを恋しがるだろう。霊がなければ、ヨーロッパ人は機械や装置を作る。これで彼らは偉くなる。しかし、ヨーロッパ人は、それによって、アーリマン文化を最高峰に追求し、自分たち自身をそこに立たせる西洋人を、自分たちの懐で教育するのである。」※1 この言葉によって、ニコラスが生きていた頃からのヨーロッパの発展が余すところなく簡潔に、そして正確に語られている。(訳注)

(訳注) 1054年に、ローマ教皇コンスタンディヌーポリ総主教コンスタンティノープル総主教)の相互破門が行なわれ、東西の教会は今日まで続く分裂状態となった。東方教会は、原初の霊性(霊界に関わる人間の中の高次の本性)をより深く受け継いでおり、それと決別することにより、西方教会は、そうした霊性が希薄となり、個人的な心魂(自我の住処)がより前面に出るようになったということであろう。

 

 この発展は、人間を自由な存在として完全に自分の足で立たせるという、神々の強大な「目標」の一部と見ることができる。自由とは、人間が神々の指導にただよく従っているのではない場合にのみ考えられる。「悪しき」霊存在が、人間も悪しきことを求めることができるように、神々によってこの世に呼び出されなければならなかった。ルドルフ・シュタイナーは、悪の存在には2種類あることを認識していた。ルシファーとその軍勢は、今後長い間、地球と結びつくこととなる、人間の真の使命から目をそらさせ、人間をルチファーの領域に誘い込む存在である。一方、アーリマンとその軍勢は、人間を物質と不可分に結びつけて、その神聖な起源と神聖な目的を忘れさせようとしている。しかし、ルシファーは人間の成長に不可欠な芸術にインスピレーションを与え、多くの損害を与えるアーリマンの冷たい知性は、人間が、自分自身についての、暖かいが偽りであるものではなく、真の自分像を獲得するために必要なものでもある。

 ニコライ1世がもたらしたのは、ヨーロッパ人を物質主義に導くきっかけであったのである。東方に残る原始的な霊的衝動から、一定期間の間切り離す必要があったのだ。後に物質的な一面性から抜け出し、完全に自分の足で立って、霊的な現実を認識し経験するために、切り離される必要があったのだ。

 かつての仏陀の天使は、フランス軍を鼓舞し、ヨーロッパ大陸からイギリス軍を追い出すために、15世紀にジャンヌ・ダルクにインスピレーションを与えた。(訳注)

(訳注)シュタイナーは、西洋の歴史的発展においてジャンヌ・ダルクは大きな役割を果たしたと述べている。当時は、フランスの支配権をイギリスの王朝が求めるなど、民族をもとにした独立した近代的国家は形成されていなかった。そこではまだ、カトリック=ローマ的な普遍衝動が支配していたからである。ジャンヌ・ダルクは、これに対してイギリス勢力を追い払い、フランスを国家として確立することに貢献した。それは、「近世的な人間の魂の発展を表わす徴候として重要な”分化”が、オルレアンの乙女の登場と共に始まった」という。近代以降の意識魂の時代の幕を開けるものだったのである。

 1879年の秋、それまでドイツの民族霊であった大天使ミカエルが、時代霊の位に昇った。ミカエルは、ドイツ人の民族霊としてのバトンを-カルル・ヘイヤーが明らかにした著作※2により明らかなように-上記のブッダのかつての天使に渡したのである。そしてこの天使は、全くミカエルの路線に沿って働いたのである。ルドルフ・シュタイナー※3 の言によれば、アングロサクソンの支配的な階層に特に広まっているドイツの民族霊に対する憎悪は、後のドイツの民族霊に感化されたジャンヌ・ダルクの行為と結びついている。

 ミカエルは、ドイツの民族霊として、特別な性質も持っており、彼の後継者も持っていた。つまり前後に揺れるという性質を持っていたのである。ドイツの民族霊が、自分の民族と特に密接な関係にある期間がある。ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデやヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの時代、そしてゲーテの時代にも、このような親密な関係の期間が存在したのだ。また、他の時は、この霊が人々から離れ、その後、ー現代のようにー自分の民族と結び付き、それを維持しようとする努力がなされるのである。ヨハン・ゴットリープ・フィヒテの発言:「人は生まれながらにしてドイツ人なのではなく、普遍的な原則を守ることによって、ドイツ人になる、あるいは獲得するのだ」※4は、この取り組みの文脈で理解することができる。フィヒテは、偉大な理想を受け入れ、実現することに関係する特別な性質を考えたのである。その様な性質は、将来的には、ドイツ国内の領土に限定されることはなくなり、どこでも花を咲かせることができるだろう。

 

民衆の霊との断絶

 民族は、民族霊に導かれる。例えば、当該の民族の使命に関わるような行為を鼓舞するのだ。民族が、その使命とつながっている限り、真の霊とつながり続けるのだ。しかし、敵対する力、現在では特にアーリマンの霊が、ある民族の中で非常に強くなり、決定的な影響力を持つようになると、その人々の真の霊との断絶が起こり、その悪魔の反像が定着する可能性があるのだルドルフ・シュタイナーは、1888年の時点で、そのエッセイ『現在の霊的サイン』において、このような断絶をドイツ人に警告していた※5。国家社会主義の台頭とともに、決定的なものではなく、ある一定の期間のものであるが、それは実現されたのだ。この断裂を治すことがとても重要なのである

 

アーリマン的不老不死のための保険会社

 本稿で何度か触れた「秘密のエリート」は、莫大な資金力を手に入れたというだけで強力なのではない。さらに、アーリマンに感化された最内奥のサークルが偏狭なオカルト知識を身につけたから、力を発揮するのである。オカルト知識は、人類のために使われるのではなく、集団の利益のために利己的に使われると狭量になる。このような力のサークルは、同じくアーリマンの霊感を受けて、メンバーが死後も地球と密接につながり、すぐに元の一派に再び転生できるような技術も開発してきた。そこでルドルフ・シュタイナーは、これらの集団を皮肉にも「アーリマン的不死のための保険会社」と呼んだ。偏狭な知識とこの「不滅」の技法は、権力者サークルの持続力とよく組織された協力体制、そして支配の目標を一貫して追求することを、かなりの程度説明している。(訳注)

(訳注)シュタイナーによれば、通常、人の再受肉は、2160年に2度行なわれる。およそ1000年に一度ということになるが、しかし、その人のカルマ等により当然その期間は変わってくる。また秘儀参入者でもある人類の指導者(マスターあるいはマイスター)達は、その期間を短くできるようである。影のブラザーフッドでも、何らかの手段で、期間を短縮しているのであろう。

 

ロシア文化の萌芽

 教皇ニコライの個我は、19世紀に、ドイツ軍の参謀総長となったヘルムート・フォン・モルトケとして受肉した。ペルセウス社からモルトケに関する2冊の本が出版されている※6。1冊目は、モルトケの膨大な手紙と彼の人生と地上での仕事に関するその他の文書から構成されている。第2巻は、モルトケの死後、モルトケ本人が妻イライザに送った一連のやりとりを網羅的に収録したものである。ルドルフ・シュタイナーは、これらの情報を完全に意識的に把握することができた。この巻は、過ぎ去った前世との関係を持つ死者の経験への詳細な洞察を、大きく拡張された視点から与える点でユニークである。例えば、モルトケは、あの世で、地上時代の自分が全身全霊で目指したドイツ帝国の勝利が、破滅的なものでしかなかったことを悟る。「対外的な勝利はドイツ国民の完全な没落を意味するものであった。そのような勝利の後には、驚くべき金儲けと“好況”の拝金主義的な時代が続き、すべての民族が団結してドイツ民族を絶滅させることになった」※7 。モルトケが、親族、特にエリザと娘の一人アストリッドがいかに自分の役に立ったか、いかに親密で援助的な関係を保ったかを述べている箇所も極めて啓発的だ。

 死後、モルトケは、将来は中欧とロシアを結ぶ霊的な仕事をしなければならないことを悟った。このことが、西と東の分離と関連している9世紀における彼の任務を逆転させた使命を彼に課すだろう。

 ルドルフ・シュタイナーは、第6文化期に引き継がれ、そこで発展するロシアの文化的萌芽について語った。モルトケの個我と「霊家族」は、このことと密接に関係している。

 しかし、シュタイナーは、この文化的萌芽をめぐる闘争が進行中であること、「秘密のエリート」の最奥部がそれを意識しており、遠い将来に向けて自分たちの支配を確保するために、それを支配しようとしていることも説明していた。したがって、「中心」-西洋と東洋の仲介者としての使命を持つ-は破壊されることになるのです。」ルドルフ・シュタイナーによれば、中欧はこの事実を意識化することが必要不可欠であるという。

 現在、ルドルフ・シュタイナーの自由哲学の意味での個人の自由の存否をめぐって、包括的な闘争が行われているのである。私たちは、この闘争をあらゆる形で認識し、人類の真の発展に貢献することを求められているのです。

 

備考

1 アンドレアス・ブラッハー、トーマス・マイヤー編『ヘルムート・フォン・モルトケ 1848-1916, Dokumente zu seinem Leben und Wirken』2 巻、191 ページ(第 2 版)。

2 カール・ハイヤー『ドイツ民族霊とは何者か?ペルセウス出版

3 参照してください。トーマス・マイヤー「東西間のヨーロッパ」第26巻9/10号(2022年7月~8月)。

4 ヨハン・ゴットリープ・フィヒテドイツ国民への演説』。

5 ルドルフ・シュタイナー「現在の霊的署名」『Deutsche Wochenschrift』。

  1. Jahrgang, No. 24 (June 1888), contained in GA 30.

6 アンドレアス・ブラッハー、トーマス・マイヤー編『ヘルムート・フォン・モルトケ 1848-1916, Documents on his Life and Work, Volumes 1 & 2』(日本経済新聞社)。

7 Andreas Bracher and Thomas Meyer (eds.) Helmuth von Moltke 1848-1916, Dokumente zu seinem Leben und Wirken, vol. 2, p. 225. (2nd ed.).

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 かつて前世で東西を分離し、西洋から霊性を遠ざけたモルトケ氏の個我は、霊性を再び取り返すために、西と東の融合、統合を進めようと霊界からインストールを送っているのだろうか?
 シュタイナーは、未来の人類の発展のためには、ドイツ等の中欧が、ロシア等の東欧と西側を結びつけることが重要であると語っていた。しかし、今、そのドイツは対ロシアのと関係で強硬派となっている。その背景にあるのは、英米地政学的な戦略であることはこれまでも取り上げてきた。
 一方で、コロナ問題をきっかけに、全体主義的風潮が各国で強まっている。健康を守るためには、国による、あるいは世界的機関による統制が重要だという理屈である。「陰謀論界隈」では、こうしたことに関連した様々なことが指摘されている。
 個人から自由を奪うことは、影のブラザーフッドやその背後の闇の霊達の願いでもある。陰謀論として切り捨てる前に、それも含めて、真実を見極めるよう努力することが大事になっている。