k-lazaro’s note

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全ての祭儀統一のための神殿


 以前、ソロヴィヨフのアンチキリストの予言と現代の状況を比較している本(「ソロヴィヨフのアンチキリスト予言と現在の世界情勢 ①」)を紹介した。現われている現象の底流にある本質を見ると、現代社会は、彼により予言された社会に近づいているというのである。

 今回は、そのインゴ・ホッペIngo Hoppe氏の著書『アンチキリストの短編物語』から、国連とスピリチュアルな運動との関連を語った部分を紹介する。

 

 さて、現代のスピリチュアルな運動の中に、チャネリングというものがある。これは、降霊術の現代版のようなものであるが、そこに出現するのは、霊的な存在だけでなく、宇宙人であったり、「別次元」の存在であったりするようだ。これまで特にこれについて学んだこともなく、詳しくは知らないので、全否定するつもりはないが、シュタイナーは、降霊術のようなものはあまり評価していなかった。そこに出てくる存在が「真正の霊的存在」とは限らず、悪意をもった存在である可能性があり、それを見極めるには正しい霊的認識が必要であるが、参加者は必ずしもそのような認識を持っていないからである。

 現代において、その一般的評価は、「スピリチュアル」な一種の「オカルト」というのが一般的評価だと思うのだが、この本で初めて知り驚いたことに(読者の中には既に知っていた方がおられるかもしれないが)、このチャネリングが国連で行なわれていたというのである。

 どうも、国連とスピリチュアルは相性が良いようなのだ。
 かつては世界平和の理想を追求する全人類のための組織というイメージがあった国連も、しだいに欧米の御用機関の性格が見えだし、今では、それが隠しようもない状況となっているが、これまでの記事からもわかるように、そもそもその創立から闇に包まれている組織であるようだ。もともと闇の霊との相性がいいのかもしれない。

 一方、ソロヴィヨフのアンチキリストの予言では、アンチキリストは、偽予言者を従えたヨーロッパ皇帝なのだが、世界の宗教を統一して、その権威をもまとった世界皇帝たらんする。政治と精神界の両方に君臨する、世界を統一する「神権政治」の頂点に座ることを目指しているのである。

 現実的には、世界中の宗教間の融和を図ろうとする運動は存在する。キリスト教界では、教派を超えた結束を目指す「エキュメニズム」運動があり、更にキリスト教以外の宗教を含む「世界宗教者平和会議」という組織も存在する。

 最近は、クリスラムCHrislamという言葉も出てきているようだ。キリスト教イスラム教を融和させる試みのようだが、このような運動については、今のヴァチカンの教皇も積極的なようで、「陰謀論界隈」では、「世界統一宗教」に向けた動きとする指摘もあるようである。

 ちなみに、今、「世界宗教、統一」などとネットで検索すると「統一教会」がヒットする。まさにこの宗教も諸宗教の統一を目指してそのようなネーミングをしていたのだろうか。不気味である。

 以下の文章では、主にスピリチュアルな運動との関連が語られているのだが、宗教の統一への志向など国連の隠れた一面が分かる記述である。

  なお、表題にある「祭儀」の原文は、ドイツ語のKultで、英語ではCultと同じ言葉である。最近日本でも使われる「カルト」なのだが、ドイツ語の辞書では、祭式、礼拝、儀式等とある。英語のCultには、辞書によれば宗派という意味もあるので、宗派や宗教としてもよいのだろうが、原文尊重で祭儀とした。

 

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全祭儀統一のための寺院

「私たちは、これを空の祭壇とみなすことができる。それは(存在する)神がいないからではなく、人が多くの名前と多くの形態で崇拝する神に捧げられているからだ。」

ダグ・ハマーショルド(訳注)

(訳注)スウェーデンの政治家、外交官。第2代国際連合事務総長(任期:1953年4月10日 - 1961年9月18日)。

 

 (シュリ・)チンモイの宗教を超えた平和の瞑想は、ニューヨークの国連本部のカルト的な瞑想室で行われた。ソロヴィエフの「全祭儀統一のための寺院」との比較は難しいかもしれないが、事実としては十分可能である。少なくとも、これが有名なハマーショルドの伝記作家で世界連邦主義者のステファン・モーグル=スタデルのテーゼである」。ハマーショルドは、国連の瞑想室のデザインを一新し、国連に代表されるすべての宗教の聖遺物を取り除き、代わりに宗教間の中立的なデザイン、すなわちすべての宗教に統一された形を選択したのである。これは、正当化できる行為だ。しかし、ニューエイジを代表する秘教主義者たちが、それまでの宗教の多元性を捨て、新たな統一を志向していることにも対応している。ハマーショルドは、このような意図を共有していなかったかもしれないが、彼の行動は、このような流れにうまく合致していた。

 

 1995年以降、ニューヨークの国連本部では、S.E.A.T.(Society for Enlightenment & Transformation)の枠組みで、特にカリスマのリー・キャロルを媒体としたチャネリングが定期的に行われていることも、スピリチュアルと国連の相互作用を示す兆候の一つである。グロテスクに見えるかもしれないが、このチャネリングの記録には、チャネリングされた存在であるクライオンギリシャ語で寒さの意)が、「私はあなた達を歓迎する。愛する者達よ、私は、磁気サービスのクライオン」と自己紹介しているが、冗談ではなく、このように書かれている。このクライオンのその後の講演(例えば2007年3月2日)では、これらのチャネリングを通して話しているのは神自身に他ならないことを聴衆に明らかにしている(ウォルシュと同様)。そして、クライオンはエネルギー秘教の原理を最も極端な形で表現していることが明らかになる。この「磁気サービスの神」は、「エネルギー」という言葉を好んで使う。また、世界平和と世界食糧の確保という国連の重要な任務を賛美している。

 ソロヴィエフの説明で、私たちは、似たような考えに出会う。世界平和と世界食糧は地球政府によって実現される、と言っているのである。これらの目標を達成するために、他のもっと分散した方法があるかもしれないことは、テーマとならない。地球規模の問題を解決するためには、中央の組織で解決しなければならないという考え方は、明らかに多くの人にとって感動的なものである。多くの秘教主義者は、これが唯一の解決策だと考えている。

 「すべての国は、自国の財産と必要性の目録を作成し、国連に提出するよう求められるだろう。すべての商品・製品を移管する必要がある。これを受け入れるかどうかは、私たち次第だと言っているのだ。何も押し付けられることはない。しかし、ヒエラルキーとキリストは、世界の生産物を信託として国連組織に引き渡し、どの国も何も所有しないようにすることを進言することだろう。そうすれば、すべてのものが必要性に応じて全人類に分配されるだろう。」(ベンジャミン・クレーム)

 このビジョンをシュタイナーの社会的有機体の三分節の考え方と比較すれば 、ここにあるものがいかに根本的に対照的であるかは明らかであろう。クレームは国家の一元的な概念を提唱しているが、シュタイナーの視点からすれば、それはユートピア的であり、自由と敵対するものと見なさざるを得ない。元国連事務次長で「グローバル教育の父」と呼ばれるロバート・ミュラーの教育計画も同様で、全世界に適用されるはずの「グローバル・コア・カリキュラム」が作成されている。これは、シュタイナーの自由な精神生活の概念(および西洋教育文化の個人主義的自己理解)と根本的に矛盾しており、それによると、具体的な状況や教育的見解に応じて、どのカリキュラムを正しいと考えるかは、個々の専門家自身に委ねられなければならないのである。 社会三分節の観点からすると、選ばれた司祭カーストのイニシエーターが、世界的に活動する普遍的国家としての国連によって、世界の統一と食糧の一般帝国を発足させようとしている事実は、危険な形のユートピアとメシア的妄想を示している。

 ソロヴィエフは、そのような願望が完全に実を結ぶとどうなるかを、物語の中ではっきりと示している。このようなイデオロギーに基づく普遍的なユートピアは、20世紀の歴史が示しているように、非常に注意深く受け止めなければならない。したがって、このような方向性を持つ秘教主義者が国連で影響力を増していることは決して無関係ではない。

 (エネルギー)秘教家が長い間、国連へのアクセスを求め、それがかなりの程度まで認められていることは前述したとおりである。主要な秘教主義者が世界政府の樹立を支持するだけでなく、積極的にそれを提唱していることも同様に明らかである。

 例えば、ミュラーは国連事務次長として40年間(!)、国連における宗教の代表性、特にニューエイジ運動の強化に取り組んできたことはよく知られているが、彼らが国連の高いポストを占めている場合は特に重要である。神権政治のようなビジョンを『世界の再創造』という本の中で述べている。グローバル・スピリチュアリティに向けて このビジョンでは、「10月24日の『国連デー』を個人が祝うべき」と述べている。「国連の旗を掲げるべきだ。国連のために祈るべきだ。 そして、宗教者は「国連の活動と目標に積極的に関心を持ち、すべての礼拝所に国連の旗を掲げるべきである。」

 国連とキリストの関係について、ミュラーは語る。「国連の高層ビルをノックして入口を求めるキリストの有名な絵があります。私はよく、もう一つの[キリストの体としての国連]という絵を想像します。」「神聖な機関」の自己理解について、これ以上極端なケースはないだろう。世界政治と世界宗教の間の神政的共生が完璧に見えるが、ミュラーの目標の構想では、制度的巨大化という徹底的に懸念される程度に達しているのである。

 

 同じような思想家は、世界の発展が最終的に神権政治のような世界政府をもたらすと確信し、熱狂している人が多い。「キリストは、相互接続されたラジオとテレビ局を通じて、すべての人々に同時に語りかけるだろう。そして、全人類を同時に精神的にシャドーイングすることで、人はあらゆる人とテレパシーのようなラポールを結ぶ」(ベンジャミン・クレーム)のだ。これは、ユリ・ゲラーが「テレビを通して視聴者のリビングにポジティブなエネルギーを送り、そのエネルギーを実験に利用する」という行為を彷彿とさせる。クレーム氏によれば、「キリストであるマイトレーヤは、もっと多くのことができるようになる」-彼は、テレビとラジオによって新しい世界宗教(世界政府を含む)を発足させるだろう。

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 神権政治とはそういうものになるのだろうが、著者は、政治が教育や文化を支配することに対して、シュタイナーの社会三分節の思想から批判している。それによれば、健全な精神生活が営まれるには、政治が介入してはならないのだ。

 また文中に、リー・キャロルを媒体とした現われるクライオンというものがでてくる。私もこの文章で初めて知ったのだが、この「エンティティ」が所属する「磁気サービス」とは、「人類の進化と新しいスピリチュアル観を促進するために欠かせない地球の磁気グリッド再構築を担当するグループ」(ウィキペディア)というものらしい。

 我々は既に、磁気がアーリマンと関連することをみてきたが、やはりこの存在の実態は、自ら語っているように、アーリマン的なものなのだろうか。

 ちなみに、「磁気グリッド」というのも面白い言葉で、まだ全然理解はしていないが、地球の各地に存在するエネルギーのスポットのようなものだろうか。つい「エネルギー」という言葉を使ってしまうが、それは物質的エネルギーではないだろう。東洋的には「気」というものに近いと思われる。グリッドとは、人間でいえば経穴、ツボのようなものと想像される。これを磁気と呼ぶのは、確かにそぐわないとは思うのである。

 

 陰謀論とされているようだが、クリスラムの動きは気になるところである。今のヴァチカンの教皇にも色々噂があり、ヴァチカンのこれまでの教えを自ら否定するような姿勢も指摘されているからである。この問題も、いずれ研究してみたいと思っている。