k-lazaro’s note

人と世界の真の姿を探求するブログです。 基盤は人智学です。

アングロサクソンとロシアの対立 ④(最終回)

 昨日、アメリカは、自国の無人飛行機が黒海でロシアの戦闘機により「接触」されて墜落したと発表した。一方で、そもそもなぜアメリカは自国から遠く離れたロシアに近接するこうした場所で活動しているのか?(勿論、ウクライナに情報を提供するためであり、それは実質的な参戦であるが)あえて接触するような危険をロシアの航空機が冒す必要はない、などの意見がネットには見られる。
 ウクライナNATO側の劣勢はもはや隠しようがなくなっており、NATO諸国では、国民の間に厭戦気分が蔓延し、戦争やロシア制裁反対の声も高まっている。
 一方、西側では、大規模な経済的破綻が迫っているとも言われている。アメリカやスイスの金融機関の破綻(のおそれ)が伝えられ、それが更に波及していくのではないかという情報が飛び交っているのだ。こうした大規模な経済問題を究極的に解決するのは世界大戦だという者もいる。それによって全てをチャラにするのだ。
 今後、世界はどこに向かうのか?危険な状況が続いていることは間違いないが、翻って、日本では、マスコミは毎日野球の話ばかりである。日本人の白痴化は進む。

 

 テリー・ボードマン氏の「アングロサクソンとロシアの対立 」の続きの、最後となる論稿がアップされたので紹介したい。

 この論稿は、現在のウクライナ危機の背景について人智学的視点で論じたものである。③までは、主に言わば表の歴史を追ってきたが、今回は、シュタイナーに基づく秘教的立場での詳しい説明が加えられている。
 それは、これまで何度も述べてきたが、今アングロサクソンが主導している現在の「ゲルマン」文明期の次に予定されている「スラブ」文明期を巡る戦いであり、アングロサクソンのエリートには、「スラブ」文明期を阻止する意図があるとするものである。
 そのために第一次世界大戦をはじめとして長期的な戦略がとられてきたが、その中心は、中欧(特にドイツ)と東欧(特にロシア)との間を分断し、ロシアを弱体化させて西側の支配下に置くというものである。そのためにとられた戦術が、ロシアにおけるボルシビッキの革命であり、二度の世界大戦、そしてその後のNATOなのだ。
 西側が、今、自国の疲弊、国民の困窮を厭わずウクライナ支援を続けているのは、ロシアの帝国主義的野望をくじくためとか、民主国家を侵略から守るためでは決してない(それらはむしろ英米が受けるべき批判である)。
 人類の未来を巡っての極めて大きな意味を持った戦いであるからである。

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アングロサクソンとロシアの対立 第3部(最終回)

投稿者:Terry Boardman|2023年2月15日|カテゴリ:East West Issues|最新情報:NWO|コメント:0件

この記事はNew View magazine #106 Jan.- March 2023に掲載されたものです。

 

 1989年の重大事件から33年後、フランス革命の勃発から233年後に勃発したウクライナ紛争について、今年『New View』誌に寄稿した3本の記事では、ウクライナ紛争の深い背景を示そうとした。それは、実は代理戦争であり、西洋、より具体的にはイギリス圏が約200年前から公にそして密かに(秘教的に)にロシアに対して行ってきた、もっと長く続く戦争の一コマだと主張してきた。この第4回目の寄稿は、この連載を締めくくるものであり、完結編となる。

 

3つの長期目標

 この長い闘いの中で、2014年から今日までの最新のエピソードは、多くの点で現代世界のひどい坩堝となった第一次世界大戦の出来事から100年(3×33⅓)後のことである。私はこれまでの記事で、大英帝国を支配するエリートたちが、基本的に3つの目標を達成するために、あの戦争をどのように引き起こしたかを説明しようとしてきた。それは、第一に、英語圏(米国を含む)の力を結集し、20世紀に台頭するドイツ、ロシア、日本からの挑戦に打ち勝ち、英語圏のエリートによる世界支配を何世紀にもわたって、いや、少なくとも、ルドルフ・シュタイナーが「意識魂の時代」(1413-3573年)と呼び、占星術的には「魚座の時代」として知られる現在の歴史の時代の終わりである第4千年まで継続できるようにすることである。このような支配を続けるには、英語圏が軍事的、経済的、技術的、文化的に優位に立つことが必要である。また、英語圏の民主主義勢力の影響を最小化するための政治的変化も必要であり、特に何らかの形の世界政府の運営を通じて、一層少数の英語圏のグローバルエリートの手に技術的手段で権威を集中させることが必要であろう。このような意図は、例えば、アメリカのブルックスとヘンリー・アダムスの兄弟(彼らのモットーである「文明=中央集権=経済」)や、イギリスのライオネル・カーティス、フィルプ・カー、歴史家アーノルド・トインビー、アルフレッド・ミルナー卿のラウンドテーブルグループ(別名ミルナーグループ)、H・G・ウェルズバートランド・ラッセルやジュリアン・ハックスレーなどのエリート宣伝マンの著作に見ることができる。実権は議会から事実上排除され、メディアや大衆のための単なる「ショー」が続くが、舞台裏では、世界経済フォーラム(WEF)のような半官半民の、あるいはチャタムハウス、外交問題評議会、三極委員会、30人評議会のような完全に民間の、エリートたちのグローバルまたは大西洋主義の集まりで行使されることになるであろう。そして、これらの民間または半民間組織は、各国政府や世界的機関(国連、WHO、ユネスコEUNATO)にその意志を実行させることになる。こうした意図は顕在化しており、現代におけるその代表例は、2019年10月にジョンズ・ホプキンス大学で開催された「イベント201」会議(WEFとビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が主催し、WHOと中華人民共和国政府の協力の下に開催された会議)を受けて、表向き2020年からCOVID-19世界大流行に対抗すべく各国政府の対策が全世界で実施・執行されたことである(中国のウイルス学者・免疫学者、高福は「イベント201」で主要な役割を果たした。彼は2017年8月から2022年7月まで中国政府の疾病管理予防センター長を務めていた)。そして、パンデミックは「イベント201」の1カ月後に中国で始まり、瞬く間に欧州や北米などに広がったとされている。2020年から先進国のほとんどの政府によって課された前例のない規模の全体主義的統制と、2021年にそれらの政府が行ったとされるCOVIDに対する注射キャンペーン(mRNA注射を採用した国々では大量虐殺が行われた)は、WEFのクラウス・シュワブやイスラエルの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリなどの人物の公的声明や著作で明らかにされているように、アングロサクソン・エリート支配下の世界政府への推進を効果的に行う手段としての役割を果たしている。

 第一次世界大戦の3つの目標のうち、英露対立に直接関係する2つ目の目標は、ロシア、そしてスラブ民族全体を、英米の覇権の下に隷属させることであった。この目標には、外に現われている側面と隠れている側面の両方があった。まず、ナポレオンの敗北以来、イギリスのエリートは2つの恐怖を抱いていた。それは、ロシアがイギリスの支配からインドを奪う次の候補になることである。ナポレオンが認識していたように、インドはイギリスの世界的な経済的覇権を握る鍵であった。この恐怖が、19世紀から1947年のインド独立まで、中央アジアの支配をめぐる英露間のいわゆる「グレートゲーム」を推進したのである。第二の恐怖は、地理学者で地政学者のハルフォード・マッキンダーが1904年から1919年にかけて発表したもので、ロシアがその潜在的な巨大な物質的・人的資源を、フランス、ドイツ、日本、中国といった、より小さく、より知的で規律正しく効率的な民族と組み合わせ、その場合、イギリスの攻撃に対して無敵なユーラシア大陸横断輸送網が作られ、ついにはイギリスの英国海軍、つまり大英帝国覇権に対して有効な挑戦を行う海軍が構築されるだろうとのものだった。この恐怖は、1945 年に米国が英国の世界覇権を引き継いだ後、米国の地政学者たちの心にも宿った。これは、故ズビグニュー・ブレジンスキーやジョージ・フリードマンなど、非常に影響力のあるアメリカの地政学者の著作や発言に、暗黙のうちに、あるいは明示的に表れている。9.11以降、2001年から2021年にかけての中央アジアにおける米軍の行動は、この継続的な懸念の証拠であった。

隠れた目標

 しかし、3つの目標のうちの2つ目には、『ニュー・ヴュー』2022年秋号での前回の記事(「英露拮抗その2」)で簡単に触れた、秘教的な側面もある。この秘教的な側面とは、スラブ民族、特にロシア人が4千年紀半ば以降に世界の「前衛文化」となる潜在能力を発揮することなく、代わりに英語圏の人々の支配下に置かれるようにすることに関係している。英語圏の人々の現在の「前衛」の地位(物質的関心と野心によって圧倒的に駆動されてしまっているが)は、通常の条件では、4千年紀半ば(魚座時代の終わり)に終焉を迎えることになるのである。

 スラブ民族が4千年紀半ば以降、世界の「前衛文化」となる可能性を持っているというのは、どういうことだろうか。シュタイナーによれば、意識魂の時代(魚座の時代)に続く霊我の時代(水瓶座の時代)には、多くの個人において、人間の「自我」(本質的な自己、人間の霊的核)が、自分と他の「自我」を霊的存在として見ることを学ぶということである。そして、霊化された「自我」は、古い血縁関係や伝統的な宗教ではなく、自らの洞察に基づいて、新しい共同体を形成しようとする。それは、他者への共感に基づく新しい共同体の時代であり、古代ギリシャやローマの人々が現代の西洋の個人主義を想像することができなかったように、現代の西洋に住む私たちには想像すらできない兄弟・姉妹的友愛の時代となるだろう。しかし、私たちは今日、非西洋文化圏に残る伝統的な共同行動の中に、この未来の予兆を見ることができる。そこでの行動は、血縁に基づく本能的で集団的なものだが、未来の(スラブ)霊我の時代には、現在の(ゲルマン)意識魂の時代の結果として獲得されるであろう道徳的個人主義に基づくものとなる。シュタイナーは、この新しい共同体、新しい友愛への新しい衝動の種は、スラブ民族の中にすでにあると述べている1スラブ民族は、より個人主義の強い西洋人に比べて、すべての東方の人々が多かれ少なかれ共同体への衝動を持っているだけでなく、またキリスト教的文化も持っている。スラブ人の共同体意識には、1000年以上にわたって共感的なキリスト教の感性が注ぎ込まれており、それは、たとえばロシアの村落生活の展開や、共同体、平和、村、世界、宇宙とさまざまに訳される「ミール」の性質に特に見ることができる。ロシアやスラブの文学には、このような共感的な感性が浸透しているのである。

 英語圏の人々は、北ヨーロッパスカンジナビア)に起源を持つ、より大きなゲルマン民族の一派である。15世紀後半から、これらのゲルマン民族は、南ヨーロッパの人々に代わって、西洋の運命を決定する存在となった。紀元前8世紀(牡羊座の時代)以来、グレコローマンや地中海沿岸の南欧人がその権威者であったが、西暦15世紀以降、イタリア、イベリア、フランス(フランスは南と北にまたがる)の軍事・文化・経済力は、スイス、オランダ、スウェーデン、ひいてはイギリスの力に道を譲った。シュタイナーは、15世紀までの2000年余りの間に、ヨーロッパ人-いずれにしても少数派デアルガ-が、自分で考えることを学び、それが、彼が「悟性魂の時代」と呼ぶ時代の重要な成果であったと、数々の講演で述べている。神々や神が自分たちを通して考えていると感じることはなくなり、自分たち自身が考えていると感じるようになったのだ。次の魚座の時代、15世紀からのゲルマン、北欧の時代では、発展の焦点は、個々の人間の意志、つまり人間の思考が人間の意志をどのように結びつくか、基本的に、個々の意志が人間の自我によって道徳を注入され、指示されるようになるか、にある。この発展段階は、ある意味思春期に似ており、危険な時期である。なぜなら、その初期段階は通常、かなりの自己中心性と利己主義、そして物質主義に陥っており、多かれ少なかれ、個人として他の人生や宇宙から疎外されていると感じる人生観があるからだ。シュタイナーが「意識魂の時代」と呼んだこのゲルマン時代、北欧時代、そしてその分派であるアメリカ時代からわずか600年しか経っていない。この50年ほどで人間の成熟が進むという好ましい兆候が見られたが、西に、特に経済生活においては、徹底的に自己中心的で競争的、物質的な文化の証拠がまだたくさん残っている。

 シュタイナーは、愛と自由のための内的能力を開発するためには必要となる抵抗を人類に与えるために存在する霊的対抗勢力は、こうした自己中心的で競争的な物質主義的態度や行動(1945年以降のアメリカの覇権主義の時代に極端になった)が、人類の発展の次の時代、霊我の時代(別名アクエリアス時代)にも続くことを望んでいる、実際、それが有効なら、人類の発展は現在の段階で止まるだろう、と述べた2。そのとき、地球上の生活は非常に悲惨で抑圧的なものになり、ほとんどの人はもはやこの惑星に転生することを望まなくなるか、転生してもすぐにこの世を去ろうとするだろう。これが、人類の成長と発展に反対する霊的対抗勢力の目標なのである。もしそれが達成されれば、人類と地球の使命や任務は失敗となる

 シュタイナーは、これら勢力が、現代の英語圏の国々の舵取りをしている人々の思考や行動に影響を与えていると指摘した。シュタイナーは、英語圏で活動する秘密のまた半分隠れたエリート集団の目的は何なのかと問う。「彼らは、英国の愛国心からではなく、全世界を純粋な唯物論のくびきの下に置こうとする欲望から活動しているのである。そして、意識魂の持ち主であるイギリス人の特定の要素がこれに最も適しているため、灰色の魔法(マスメディアを意味する)を使って、これらの要素をこの唯物論の推進者として利用しようとするのです。ここが重要なポイントです。世界の出来事にどんな衝動が働いているかを知っている者は、それを操縦することもできる。他のいかなる国家的要素も、他のいかなる民族も、全世界を唯物論的領域に変容させる材料として、これほど使い勝手のよいものは、これまでにはありませんでした。だから、この国家的要素の首に足をかけ、すべての霊的努力-もちろん、すべての人間に等しく生きている-を剥奪しようとするのです。カルマが、ここ(イギリス)で意識魂が特に強く働くように命じているだけに、秘密の兄弟団は、イギリスの国民性の中にある要素を探し出しています。彼らの目的は、地球上に物質主義の波を送り込み、物理的な次元を唯一の有効なものとすることです。」この最後の点は、西洋において、精神的な実践が物理的な目的によって支配されたり、物理的な目的のために使われたりする方法、例えば、次のようなことから理解することがでる。クリスマスやイースターの商業化、武道や瞑想といった東洋の精神修養を、生き方からスポーツやマインドフルネスといった「健康」をサポートする「技術」に変えること、さらに最近では、仮想現実、セカンドライフメタバースといった、個人が自分の幻想を実現できるとされる代替世界の創造が行われているのだ。

 

ロシアの破壊

 1901年から1909年にかけてのアメリカ大統領セオドア・ルーズベルトは、熱烈なフリーメイソンであったが、特にロシアをスラブ民族の代表として、またいつの日か英語圏の民族に取って代わるであろう未来の大国として重視していた。 彼は、ロシアが南アジアや東アジアに進出することを懸念しており、それを阻止しなければならないと考えていた。同時に、ロシアの内部問題、つまり弱い政府、国民の貧困と苦しみ、水面下の革命的な力についても熟知していた。そのため、1901年にイギリスの友人である外交官セシル・スプリング・ライスに語ったように、確信があった。「ロシアの成長、つまりスラヴの成長は遅い。(...)ロシアの日はまだ遠い。20世紀はまだ、英語を話す男たちの世紀であると思う。」4

 第一次世界大戦中、たとえば1916年から1917年にかけての『非真実のカルマ』の講義で、シュタイナーは繰り返し西欧のオカルト集団の戦前の計画や意図に言及し、中欧の民衆が歴史を長期的視野で考える必要性を強調した。そうしなければ、中欧の民衆は、そうした西欧エリートの長期的思考の基盤を知らなければ、西欧エリートに対して常に不利な立場に立つことになる、と彼は言う。

こうした西側エリートの意図に対するシュタイナーの回答は、例えば1918年12月1日5に公的に示された。「ロシア(すなわちボルシェビキ革命-TB)で展開したことは、基本的に西側で求められていることの実現に過ぎない。[西側の]人々が意識的に望んでいることについて何を言おうとも、彼らが目指しているのは、西側に主人のカーストを、東側に経済奴隷のカーストを、ライン川から始まって東へアジアへと拡大することである。社会主義的に組織され、英語圏の人々には適用されない社会構造のあらゆる不可能性を引き受けることになる奴隷のカーストである。」 ここでいう「不可能性」とは、社会主義的秩序が西側のエリートによって「不可能」、すなわち社会にとって本質的に有害であり、西側で実施されるべきものではないとみなされることを意味していた。1917年以降のロシア、1945年以降の東欧、そして特に1990年以降の中国の歴史は、このことをはっきりと証明している。

 シュタイナーは、15世紀以降の近代史において、西洋における民主主義の衝動は、必然的に社会のあらゆるレベルにおける個人の自己主張につながるが、唯物論の高まりによって、1789年以降のフランス革命ですでに明らかになったように、実際には全体主義無神論共産主義に帰結するということを知っていた。このことは、西洋のオカルト兄弟団も知っていた。彼らは、この避けられない社会主義共産主義が西洋を支配することを許さないことを決意していた。その代わり、西洋からそのような力を東洋に向かわせ、東洋の伝統的な集団主義と兄弟愛への性向から、より容易に採用されるようにするのである。この「社会主義的実験」は、スラブ民族、特にロシア人の文化的素質を弱体化させることにつながり、その結果、彼らが4千年後に行おうとすることを妨げることにつながる。1907年以来、イギリスの同盟国でありながら、その日までは100年近くもイギリスのエリートたちから最高の帝国的ライバルとみなされていたロシアを破滅させるということである。

 「1917年12月23日、ミルナー卿とロバート・セシル卿は、フランスに対して、ロシアの南部地域を勢力圏に分割することを提案する覚書を作成した。フランスはウクライナとクリミアを手に入れ、イギリスはコーカサス地方とドン河畔のコサック地方を自分たちのために確保する」というものだった。 ミルナーは、ドイツ人がロシアの資源を支配するのを防ぐために、あらゆる手段を講じる必要があると考えた。彼は、ロシアにおいて「内戦、あるいは単に混乱と無秩序の継続は、この観点から我々にとって有利である」6と書いている。「1918 年、イギリス、フランス、アメリカ、日本の軍隊がロシアに上陸した。イギリス軍は 3 月にムルマンスクに、8 月にアルカンゲルスクに到着した。「その後 3 年間、ロシアは内戦の混乱に陥り、ミルナーは西側の利益にとって『好都合』であると考え ていた。しかし、介入軍は赤軍に決定的な打撃を与えるだけの兵力を有していなかった。実際、そのような打撃を与えようともしていないように思われた。革命家の最も激しい敵の一人であったウィンストン・チャーチルでさえ、1919年2月27日に「これらの事業の背後には『勝利への意志』はないと認めざるを得なかった。この事業全体は、反共勢力の勝利ではなく、ボリシェヴィキ支配の強化につながったのだ。」7

 Markus Osterrieder、Guido Giacomo Preparata、Antony C. Sutton などの研究者は、ロシア内戦 1917-1922 とその後に、イギリスとアメリカがいかに意図的に白軍を支援せず、ボリシェビキ政権に資金を提供したかを詳述した8。資本主義であれ共産主義であれ、西側資本主義に対抗しうる強力な経済を持つロシアは、ロンドン市やウォール街では望まれていなかった。英米のエリートたちは、1917 年春にニューヨークとカナダ経由でロシアに到着したトロツキーに多くの便宜を図り、彼は内戦でボルシェヴィキの勝利を組織することになる。イギリスは、シベリアで民主的な連邦を目指すコルチャック提督の白ロシア軍を「支援するように見えた」が、イギリスはコルチャックがシベリア連邦を民主的な全ロシア国家の核とするために必要な支援を与えることを拒んだ。イギリスはシベリアをヨーロッパロシアから切り離したかったようで、間違いなく西洋の利益による搾取のためにシベリアを開放するためであった9

 1918 年 10 月 17 日、ニューヨーク連邦準備銀行ローレンス・サンダース副議長は、 ウッドロー・ウィルソン米大統領に宛てて、「大統領閣下、私はロシア国民に最も適したソ連政府 に共感しています」10 と書き送っている。私たちはここで、今日のロシアの石油・ガスパイプラインをめぐる争いや、今年初めにバイデン大統領と国務省ビクトリア・ヌーランドが繰り返し述べた、ロシアとドイツを結ぶパイプライン「ノルドストリーム2」の中止を求めるアメリカの決意を思い出すことができる11。100年前、国務省は(大量虐殺を行った)ボルシェビキ政権を認めるよう迫った。1918年2月、ウィルソン大統領の最側近であるハウス大佐に宛てたメモの中で、国務省は「ボルシェビキが米国に承認されたなら、『我々は今やロシアのすべての原材料埋蔵量を管理し、すべての国境通過で当局者を管理できるだろう』」12と書いている。今や米国の新たな信条は、武力介入ではなく、「貿易を通じてボリシェヴィキを変える」ことであった。英国では、1916 年 12 月に盟友ミルナー卿がロンドンで起こした政治的「政権交代」クーデター以来の外務大臣アーサー・バルフォーが、ロシアを一定の地理的範囲にとどめ、内政に介入しないことに関心を寄せていた。ロシア内戦が進むにつれ、白軍にとって状況は悪化し、大量虐殺を行うボルシェビキはますます過激になった。秘密警察チェカは、職業や階級を理由に数万人のロシア人を殺害したが、その動機は1790年代のテロル全盛期のフランス革命家や1970年代のカンボジアポルポトと同様であった。連合国側の論調は、軍事介入から、封じ込めの必要性、軍隊の衛生管理、そして何よりもドイツとロシアを引き離す必要性へと変化した。マッキンダー自身は、「ドイツとロシアの間の緩衝材として、西スラヴと南スラヴの独立した親西欧国家の帯を...」と主張した。この目的のために、彼は、ドイツ人の、ヴィスワ川以東と「浄化された」ポーランドから強制「移動」を提案したのである。[これは1945年に行なわれる。T.B]ロシア人自身は、少なくとも 1、2 世代はドイツの侵入に抵抗することが「絶望的にできない」と彼は言った。「ある種の独裁的支配、すなわちボルシェビキによる支配は、それゆえ、『避けられない』ものだった。だから、ロシアは、自分自身の力から、ドイツの誘惑に抵抗できるようになるのだ。」13

 

 こうして西側諸国は、ロシア国民を、西側諸国自身が促進した共産主義支配の下での数十年にわたる投獄生活に追い込むことになった。この時代には、無数の司祭や修道女が殺され、数多くの教会や修道院が破壊され、1917年から1922年のチェカによる「赤い恐怖」で10万人から20万人が処刑され、ロシア人とウクライナ人約400万人を殺した1932年から33年の国家によるホロドモール飢饉、約116000人を殺した非人道的収容施設システム、スターリンによるパージ(約100万人が死亡)、最悪のものは、約3400万人ものロシア人が、国家社会主義ドイツによる巨大な侵略(1919年)で殺された。この政権は、ドイツとロシアの国民が将来、米国と英国に対抗することがないよう、互いに戦争するように誘い込むために、国内と国際の2つの権威主義社会主義の巨獣を作り出す目的で、その台頭が西側諸国によっても促進され、見逃されたのである。14チャーチルは 3 年間(1941 年~44 年)、ドイツ軍が東部戦線で血を流して消耗するまで、西側でナチス ドイツに対して第二戦線を開くことを認めようとしなかったが、ヒトラーの敗北後、チャーチル はすぐに、1941 年~45 年の英国の同盟国であるソ連ロシアに対して再び戦争しようとした。

 ロシア国民は70年間、共産主義者の収容所に収容され、当時の米国の主要な対ロシア戦略「専門家」であったジョージ・F・ケナンの表現を借りれば「封じ込め」られ、その間、米国とソ連の間で一定のビジネスが行われ、アヴェレル・ハリマンやオクシデンタル石油のアーマンド・ハマーといった米国の特定のエリートがソ連を訪問してソ連の指導者と秘密裏に関係を持ち続けた。1989年から91年にかけて、西側諸国は70年前に始めた「社会主義実験」を打ち切り、「ハーバード・ボーイ」(ビジネスの「コンサルタント」「アドバイザー」)がエリツィンの時代にロシアに降り立ち、略奪できるものは略奪した。一方、ロシアが沈むと、中国が浮上した。中国における「社会主義実験」の次の段階は、1978年に鄧小平によって開始されたのである。ロックフェラーと彼の従者であるブレジンスキーが、東アジアのエリートを世界政府計画に組み込むために三極委員会を設立したのと同じ年であり、三極委員会とロックフェラー主導の外交問題評議会(いずれも民間組織)の共同支援の下、「1980年代プロジェクト」が始まったのと同じ時期であった。ソビエト連邦の崩壊は、経済的ショック療法(「統制された崩壊」と呼ばれた)、急激な世界的人口減少の計画とともに、このプロジェクトの重要な要素であった。

 

ロシア解体計画

 1990 年代、ロシア人は、経済と国民の健康の急速な低下とともに、ウクライナカザフスタン中央アジアの 4 つの小さな「スタン」15 という 3 つの巨大な領土と、ワルシャワ条約軍事同盟の安全を失ったことを知った。彼らは、表向きはワルシャワ条約軍から「守る」ために 1949 年に設立された NATO が、ワルシャワ条約終了後も西側諸国によって解散されることなく、それどころか、NATO は強化され続け、最終的には 90 年代後半から東側に拡大し、ロシアそのものに近づいたと指摘している。NATOの初代トップであるヘイスティングス・イズメイ卿(第二次世界大戦中、ウィンストン・チャーチルの首席軍事補佐官)は、NATOを「ソ連を締め出し、アメリカを入れ、ドイツを抑えるために」創設したと述べたことで有名である。ソ連をロシアと見立てた現在でも、NATOの意図するところは変わらないようだ。 ロシア側は、西側メディアの一部のエリートが、ロシアのさらなる解体、さらにはウラル山脈以東の広大なロシア領土の喪失を想像し始めたと指摘した。これは、ソ連が崩壊してわずか1年後の1992年12月に、ロスチャイルドフィアットが支配する有力な雑誌「エコノミスト」が予言したようなものである。同年、ブレジンスキーはCFRの雑誌『フォーリン・アフェアーズ』(71巻4号、1992年)に、「ロシア自身の統一がまもなく危うくなり、おそらく極東地方は遠からずシベリアと極東の独立した共和国を立ち上げようと誘惑されるかもしれない」と書いた。彼は、ロシアの3重の分裂を想像した。1991年から1994年にかけて、ソ連の指導者ニキータ・フルシチョフウクライナ人)が1954年に恣意的にクリミアをウクライナに渡すまでロシアの一部であったクリミアの親ロシア派が、ウクライナから独立した共和国になろうとしたが、親欧米のボリス・イェルツィンが1994年にロシアで政権を固めた後、キエフからさらなる自治や独立を求めてクリミア人が努力してもバックアップせず、キエフはクリミアに対する権限を再び獲得できた。しかし、2014年にその権威を失うことになる

 今年(2022年)、米国の権威ある雑誌『アトランティック』に、「脱植民地化」という言葉を隠れ蓑にして、ロシアの解体を呼びかける記事が掲載された。記事は、1991年に当時の米国国防長官ディック・チェイニーが、「ソビエト連邦ロシア帝国だけでなく、ロシアそのものを解体し、二度と世界の脅威とならないようにすることを望んでいる 」と指摘した。記事は続けてこう述べている。「西側諸国は、1991年に始まったプロジェクトを完了させなければならない。ロシアを完全に脱植民地化することを目指さなければならない......。ロシア帝国主義は...国際安全保障に最も緊急な脅威を与えている。今、モスクワがその植民地時代の歴史を顧みることなく、帝国を維持することを許してきたツケが回ってきている...。ロシアは、ここ数十年で世界が経験したことのない大規模な戦争を引き起こしたが、それはすべて帝国のためである。さらなる戦争と無意味な流血のリスクを避けるために、クレムリンはまだ保持している帝国を失わなければならない。ロシアの脱植民地化計画は、最終的に完了しなければならない。」16

 しかし、プーチンは、西側の論者たちが虚偽の主張を続けているように、帝国や帝国再建のために、2022年2月に「特別軍事作戦」を開始したわけではない。なぜなら、西側諸国は2014年に違法なクーデターを起こし、民主的に選ばれたヤヌコビッチ大統領政権を追放し、ウクライナを事実上支配していたからである。キエフの新政権は、ロシア語を話す市民に対して直ちに差別的な法律を施行し、その法律に抗議した。キエフが対応する気がないことを示し、代わりに極端な民族主義民兵集団を送り込んで暴力で意思を強制すると、ロシア語を話すドンバスとクリミアの市民がキエフ政権に反旗を翻した。ウクライナ内の自治拡大を求める運動として始まったものは、ドンバス、クリミア、オデッサキエフの強硬さと暴力を用いたために分離主義運動となった17。2014年2月のキエフの暴力的なクーデターによって目的を達成した欧米は、その後、ISIS、EU危機、ブレグジットに夢中になったが、その裏で米国は2014年からキエフに非常に多額の資金と軍事物資を流し、軍事訓練も提供していた。プーチンはこのことをすべて観察していた。また、キエフが自国民と呼ぶドンバスの人々への砲撃や爆撃を8年間も続けている間、西側メディアがほとんど関心を示さなかったことも、プーチンは見ていた。しかし、今年2月以降、ロシアに激怒している西側諸国の人々は、この8年間の紛争と殺戮、そしてフランスとドイツが立ち会い署名した、ドンバスのロシア語を話す人々のウクライナ内での自治拡大を定めたミンスク協定の実施をキエフが執拗に拒否していたことを忘れているようだ。アンゲラ・メルケル前首相は最近、ドイツのDie Zeit紙(2022.12.7)のインタビューに応じ、述べてるいる「2014年のミンスク合意はウクライナに時間を与えようとしたものだった。ウクライナはこの時間を使って、今日見られるように強くなった。2014/15年のウクライナは、今日のウクライナではない。その実例が、デバルツェヴェの戦い[2015年1月]である。2015年の初め、あの時、プーチンは簡単に制圧できたはずだ。そして、NATO諸国が当時、ウクライナを助けるために今日と同じだけのことができたかどうか、私は非常に疑問だ。」当時、ドイツ政府とフランス政府は、ミンスク合意はウクライナに平和をもたらすことを目的としたと言っていたが、今、メルケルは、ウクライナ(すなわちキエフ政権)をより強く、すなわちドンバス分離主義者とそれを支援するロシア軍(例えばワグネル民間軍事会社)と戦う能力を高めるためだったと言い、これこそがウクライナを2022年2月24日から現在のようにロシアに対して抵抗できるものにしたと示唆している。

 ウラジーミル・プーチンは、ウクライナの億万長者イホル・ホロモイスキーの政治的創造物である喜劇俳優のヴォロディミル・ゼレンスキーが、まさにドンバスの平和をもたらすという約束で2019年にウクライナ国民の73%に選ばれたが、その後就任後そのようなことは何もしなかったことを見ていたはずである。ロシア人は、NATO軍が着実にロシアの国境に近づいていること、2004年ごろから西側メディアでウラジーミル・プーチンが常に悪者にされていること、2016年(ブレグジットとトランプの年)以降、それまで西側メディアはかなり注目していたものの、ウクライナの強いネオナチ要素を認識しようせず、突然、その関心は失われ、2022年には完全に消滅してしまったことを見ていた。それどころか、西側の主張は「ウクライナナチスはいない! ウクライナにはユダヤ人の大統領がいる!」である。 しかし、ウクライナの様々なナチスグループに関する多くの動画は、今でもネット上で見ることができる。ただ、西側メディアにとっては、もはやそれを語ることが便利でも都合よくもないため、語られないだけである。ロシア人は、2021年12月にロシアが東欧の安全保障に関連する包括的な議論を求めたのに対し、西側諸国が無愛想にそれを退けたことも見ている。

 今日、西側メディアはロシアの「脱植民地化」(=解体)について話すことを好んでいる。脱植民地化は、南アフリカでの「ローデスは倒れろ!」像問題(2015年)、米国でのジョージ・フロイドの死(2020年)以来、近年、左翼の流行語となっている。少数民族がいるとはいえ、ロシア連邦は圧倒的に白人の国であり、キリスト教の国である。それゆえ、反帝国主義的な「脱植民地化」の語りは、逆にロシアに適用されやすい。なぜなら、その目的は英語圏のエリートの帝国主義的、グローバリズム的野心に奉仕することだからである。

 最近、米国務省が出資する欧州政策分析センターの研究員で、キエフ在住のアンダース・オストルンドは、次のように書いている。「ロシアのウクライナに対する戦争は、ロシア連邦の解体によって終わるだろう。ロシア連邦は、中立を憲法に明記した、小さな、非武装の、力のない共和国に取って代わられるだろう」18

ドイツとロシアを引き離す目的

 第一次世界大戦で達成しようとし、現在も彼らの方針を決定しており、英語圏のエリートのる第3の目的、それは、英語圏諸国の統合とロシアの無力化のほかに、ドイツを傀儡の地位に落とし、ドイツとロシアのいかなる結合や同盟も阻止するという目標である。秘教的な言葉で言えば、これは現在のゲルマン時代と将来のスラブ時代との間の永続的な文化の架け橋を吹き飛ばすことを意味する。この2つの目標は、今のところ両方とも「印象的」に達成されている。何百万人ものロシア人とドイツ人が、互いに対抗する巨大な戦争で殺され、将来の恨みと憎しみの種を蒔いた魂の土壌が無限にある。しかし、戦争や紛争では、良いカルマも悪いカルマも生み出される。1914年から1945年にかけてスラブ人やドイツ人の肉体に転生した無数の人々が、20世紀に互いに対立し、多くの痛みと苦しみを与えさせたものを、次の転生では理解し克服しようとするだろ。

 この魚座の時代、つまり意識魂の時代において、ドイツ語圏の人々は「自我」を擁護する任務を担っており、一方、英語圏の人々は意識魂そのものの代表者である。ヨーロッパの民話やおとぎ話には、主人公やヒロインに3人の兄弟や姉妹、あるいは何らかの侍女がいることがよくある。ルドルフ・シュタイナーの4つの「神秘劇」(1910-1912年)にも、これらの人物が登場する。この3人は、人間の「自我」を補佐する3つの魂の力である。彼らはそれぞれ、「自我」が作用する「思考」「感情」「意思」の3つの代表とみなすことができる。意識魂は、意志が作用する魂の部分であり、思考は悟性魂を通して、感情は感覚魂を通して作用する19。イギリス人は意識魂の人々であり、ドイツ人は自我の人々である以上、イギリス人とドイツ語圏の人々の間の対立は、魂の意志要素を通して作用する自我と自我自身との対立:自我自身とそれ自身の意志との対立を意味する。 意志は世界に作用するため、英語圏の人々は古くから物理的な世界の外側に目を向ける傾向があり、一方、ドイツ語圏の文化は常にInnigkeit(内なるもの、親密さ)を主な特徴としてきた。西ヨーロッパの他の民族と同様、イギリス人は冒険と富を求めて海に飛び出し、やがて物理的、科学的裏付けを持った世界的な帝国を築き上げた。これとは対照的に、ドイツ人はアメリカ大陸への移住はあったものの、ほとんどの場合、中央ヨーロッパの森や丘、山の中で「アットホーム」な生活を送っていた。彼らはヨーロッパ外の大帝国を作ることはなく、バッハ、ベートーベン、ブルックナーからゲーテヘーゲルユングなど、偉大な芸術家や思想家の名を挙げればキリがないが、心と魂の内面を探究した。イギリス文化は、物質主義や外的な力の誘惑にどう対処するかという問題を抱えていた。それは、自分から離れすぎてしまうことで、自己や私との接触を失ってしまう(「Just Do It」-ナイキの広告スローガン)ことに起因する。これとは対照的に、ドイツ文化は、妄想や、知的あるいは感情的な狂信の誘惑にどう対処するかという問題をより多く抱えていた。これは、人が内側に向かいすぎたときに生じるもので、「自我」は潜在意識の存在(Blut und Boden=血と土)にとらわれ、固定化するか、それによって膨張してしまう。ヨーロッパで「自我」と「意識」の魂の民族が互いに戦争したことは、災難であった。これらの2つの、内に焦点をもつものと外に焦点をもつも人々は、人類の善のために互いに協働しなければならないからである。

 人類が過去数千年にわたり発展させてきた人間の「自我」の3つの魂の力(感覚魂、悟性魂、意識魂)を超えて、シュタイナーが「霊我」「生命霊」「霊人」と呼ぶ、まだ発展していない3つの霊的力がある。これらは3つの魂の力の変容した霊的対応部分である。 これらのうち、最初の「霊我」、変容したアストラル体(または感覚魂)は、東ヨーロッパの人々、スラブ民族、および彼らに近い関係にある人々(例えばフィンランド人、バルト人、ルーマニア人)が特に発達されることがわかるだろう。シュタイナーはこれを次のように述べている。「(それは)魂の中の魂である。全ての人の感情がそれに抗っても、この真実が生きている魂の部分が、意識魂である。」20この魂の部分で、霊的世界からの直観が始まり、個人は、自分が単なる思考と感情の人格(宇宙、仲間、そして自分自身から疎外されていると感じることもできる)ではなく、霊的な個人(自分が宇宙、仲間、すべての生命と一体であると感じ、知る)であると気づき始めるのである。ゲルマン民族(もちろん英語圏の民族も含む)が「前衛民族」である意識魂の時代(1413-3573年)は、したがって、人類の発展における魂の段階と、真の道徳と倫理が個人の霊的直観によって「自我」の中に統合される霊的段階の2つをつなぐ重要なエポックである。このような基盤の上に個人が集まれば、道徳的な根拠を持った新しい共同体が形成されることになるのだ。

 したがって、適切に発展した意識魂の魚座時代(ゲルマン人)とそれに続く霊我の水瓶座時代(スラブ人)の間に橋を架けることが極めて重要である。反対勢力はこの橋を破壊しようとしているのだ。1914年から1945年にかけて、英語とドイツ語の文化圏でそれぞれ支配的であった意識魂のエポックの外側と内側の2つの側面の関係を破壊しようとしたように、そして今も破壊しようとしているのだ。

 1910年にオスロで行われた「民衆の魂の使命、ゲルマン/北欧神話との関連」と題する連続講義の最初の講義で、シュタイナーは次のように述べている。「それはとても重要です。近い将来、人類の運命は、人類に共通の使命を果たすために、これまでよりもずっと多くの人を集めることになるからです。」ここで彼が言っているのは、350年から400年の連続した期間に、次々と異なる衝動を人類にもたらす7柱の大天使のうちの1人、大天使ミカエルの時代についてである。ミカエルの時代は1879年に始まり、2250年頃まで続くと言われている。 この時代は、ますます国際的な時代であり、民族主義的な衝動は、太陽のすべてを包含し、すべてに関係する霊的影響を反映する霊的理想主義の影響を受けて、着実に減少していくだろう。精神科学は、太陽を原子力発電所としてではなく、太陽のロゴス(宇宙キリスト)に仕える霊的存在(伝統的にはキリオテテス、ダイナミス、エクスシアイとして知られる)の3重の共同体として捉え、地球と太陽系のすべての生命と外的光の源であるだけでなく、私たちに代わって内外のすべての体験を照らし、包含する思考の光の起源であると見ている。ミカエルは伝統的に太陽の大天使であり、他の6人の大天使は太陽系の他の6つの伝統的な天体の大天使である。しかし、シュタイナーが、次のように述べているのは注目に値する。「いくつかの民族に属する個人が、この共同ミッションに自由で具体的な貢献をもたらすことができるのは、まず第一に、彼らが属する民族についての理解、すなわち『民族の自己認識』とでも呼ぶべき理解を持っている場合だけです古代ギリシャアポロンの秘儀では、「汝自身を知れ」という文が大きな役割を果たしました。遠くない将来、この文は民衆の魂に向けられるでしょう。「民衆の魂としての汝自身を知れ」と。この言葉は、人類の未来の仕事にとって、ある種の意味を持つでしょう。」 (強調 - TB) 民族や国家、民族は、霊的なものと自然なものの二つの要素の間で生きている。霊的な世界では、その民族をその歴史を通して守り導く責任を負う民族霊、または「上」の霊界の大天使と、その民族が住んでいる地理、地質、気候、歴史、言語、文化などの、より地上の要素の間で。この、より地上に接した自然の要素が、民族の「民族の魂」を形成する。民族霊、あるいは大天使は、その民族の運命を監督し、伴走する霊的存在である。これは、両親のDNAによって作られた人間の肉体の芽と、受胎後しばらくして霊界から肉体の芽に転生して一体化する個々の霊に似ていると考えることができます。私たち個人が「この共同ミッションに自由で具体的な貢献をする」ためにはどうしたらよいかを理解し、また、私たちの魂の中に働くかもしれない排外主義的な衝動を、たとえ微妙なものであっても防ぐことができるようになるためには、この講義で彼が語っているような民族の自己認識が必要なのだ。

 

セント・ジョージとドラゴン

 英国人の場合、セント・ジョージが王女(あるいは乙女)をドラゴンから救うという英国的なイメージが、少なくとも中世の時代から英国にどれほど根付いているのか21、そしてこのイメージが、例えば外交問題に対する見方や価値判断にどれほど影響を与えているのかを自覚することが含まれる。一方的なマスメディアの影響もあって、多くのイギリス人がウクライナの旗を掲げ、ウクライナの旗のバッジをつけ、「I stand with Ukraine」などと言っているのは、その典型的な例である。ほとんどのイギリス人は外国語をほとんど、あるいはまったく話さない。実際、1960年代以前は、外国語を話す人は「変わり者」、あるいは「怪しい人」とみなされることがよくあった。1960年代まで、この島国は何世紀にもわたって「外国人」を非常に警戒していることで知られていた。その結果、エリートを除いたイギリス国民は、長い間、外交問題に比較的関心が薄く、教育もあまり受けてこなかったと言うのは、単なる一般論ではない。外交問題はやはり複雑な問題であり、一般人の生活とはかけ離れているように見えるかもしれない。しかし、例えばマスメディアによって「いじめっ子」のイメージ(それはイギリス人にとっては全く異質なイメージではない)が彼らの前に示されるたびに、セント・ジョージが乙女をドラゴンから救うというイメージは決して遠くにあるのではなく、複雑な外国の状況にしばしば安易に適用されてきた。そこでは、エリートの利害が、エリートにとっては利益になるが、イギリスの一般住民にとっては必ずしも、あるいは全く利益にならないイギリス政府の行動をイギリス国民に支持させたいと望んでいるのである。

 1914年のベルギーとセルビア、1939年のポーランドは、イギリスの「セント・ジョージ」が、凶暴でいじわるな「ドラゴン」から救い出す「乙女」として表現されたことを思い起こすことができる。

 現在のウクライナ紛争はこの典型的な例であり、特に「いじめっ子」と「聖ジョージ」のイメージに、英国の報道機関、政府、メディアによる200年にわたる反ロシアのプロパガンダと恐怖の演出が加わると、このような表現になるのだ。つまり、ロシアがウクライナに「侵略」したのだ。大きな力を持ついじめっ子(ドラゴン)が小さな負け犬(乙女)をいじめているのだから、英国ができる限り断固として抵抗しなければならないのだ。ニュービューの4つの記事で、私は、この問題がそれほど明確なものではないこと、そしてこの場合、一見小さな「負け犬」(ウクライナ)は、実際には、ブルドッグであり、NATO、国連、WHO、そしてEUを創設し支配するブルドッグ・ハンドラー、アングロサクソンのエリートたちの根深い外的、秘教的利益に奉仕するために、ブル・牡牛(ロシア)を罠に掛け、捕らえ、最終的には破壊できるよう長年にわたり仕掛けられてきたことを示してきたつもりである。

 英国の人々、特にイギリス人は、聖ゲオルギウスの姿により潜在意識を刺激されるのだろう。英国人が、シュタイナーが「民族的自己認識」と呼ぶものを行使し、現在の紛争に対する判断に影響を及ぼしているかもしれない魂の中の潜在的な動機を意識の中に完全に浮かび上がらせることができれば、彼らは、エリートたちが自分たちとロシアの人々との関係を汚染し、ヨーロッパと人類にとって現在も遠い将来も非常に重要な、ドイツ人とロシア人、さらには現在のゲルマン人と将来のスラブ人の間の橋を破壊することを防ぐことができるかも知れない。

 

1 アンドレアス・ブラッハー編『Kampf um den russischen Kulturkeim』(2014年)343-4頁を参照のこと。

2 例えば、1918年10月10~11日のシュタイナーの講義(Collected Works GA 184)参照。

3 R.シュタイナー『不真実のカルマ 第2巻』1917.1.15、GA 174。私たちは、イギリスの国民性の中にあるこの「ある要素」とは何なのか、と問うことができる。それはそれ自体が主題であり、少なくとも過去1000年にわたるイギリス人の歴史について多くの思索に値するものである。

4 M. Osterrieder, Welt im Umbruch (2014), p. 929.

5 GA 186。

6 オスターリーダーOsterrieder, p. 1346.

7 オスターリーダー、1346-7頁。

8 マルクス・オスターリーダー(Welt im Umbruch, 2014)、グイド・ジャコモ・プレパラータ(Conjuring Hitler, 2005)、アントニー・C・サットン(Wall St. and the Bolshevik Revolution, 1974)。

9 Osterrieder, p.1348, n.3523.

10 Osterrieder, p. 1348.

11 27.9.2022. https://21stcenturywire.com/2022/09/28/did-nato-just-blow-up-the-nordstream-pipelines

12 オスターリーダ、p.1349。

13 オスターリーダー、1351頁。

14 G.G.プレパラータ『ヒトラーを呪縛する』(2005年)参照。

15 ウズベキスタントルクメニスタンタジキスタンキルギスタン

16 https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2022/05/russia-putin-colonization-ukraine-chechnya/639428

17 2014年5月2日、オデッサ労働組合会館で、反キエフ政権のデモ参加者42人が親キエフ政権支持者によって焼死した。この残虐行為は、西側メディアによってほとんど忘れ去られている。

18 https://twitter.com/andersostlund/status/1513407913611739136

19 R・シュタイナー『神智学』(アントロポゾフィー出版社、1971 年)参照。

20 シュタイナー『神智学』24-25 頁。

21 エドワード3世の治世中、1327年から1377年。

22  2022年2月21日、「特別軍事作戦」開始の3日前に、ロシアのプーチン大統領は分離主義共和国であるドネツクとルガンスクの独立を承認した。アングサクソンのグローバリズムの影響下にあるほとんどの政府(NATOEU加盟国など)は、この2つの新しい国家を承認しなかった。

 

  テリー・M・ボードマン   2022年12月

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 文中に出てきた感覚魂、悟性魂、意識魂、あるいは霊我、生命霊、霊人というのは、シュタイナーによる、人間を構成する見えない要素の名である。前3者は、体、魂、霊のうちの魂を、後3者は霊を更に細分したものであるが、霊の部分は、現段階では潜在的に存在しているのみで、それらを発展させていくのが、今後の人類の使命なのである。

 大雑把に言えば、これまで人類は、霊界に生まれ、その後、物質世界に下ってきたが、再び霊界に戻っていくのだ。その途上で、人間の霊的要素を発展させていくのである。しかし、こうした人類の霊的進化を望まない、阻止しようとする霊的勢力がある。現在の主なそれは、アーリマンと呼ばれる「悪魔」とその配下の霊的勢力である。
 文中で「英語圏のエリート」と呼ばれる者達とは、具体的にどのような集団を意味しているのかは分からないが、おそらくWEFの様な組織に名を連ねている者、あるいは名はでていないが、その上層部で活動しているような者達であろうか。
 しかし、これまでのこのブログの記事に従えば、おそらくその背後にまた、見えない組織があるのであろう。影のブラザーフッドである。そしてそれを実質的に動かしているのが前述の進化に対抗的な霊的勢力となるのではないだろうか。

 更に注記しておきたいことがある。文中にアングロサクソンやスラブなどの民族名が出てくるが、勿論、これらの民族をことさら批判したり、その優越性を主張するのは間違っているだろう。各民族には、時代に応じて果たすべき本来の役割があるということであり、その目的は、人類が全体として進化することなのだ。他の民族を否定することは、結局自らの存在を否定するのと同じである。
 また問題なのは、アングロサクソンと言っても、その一部の「エリート」であり、彼らの多くも実は、自分が何をしているかを知らないのだ。
 そもそも、人は、輪廻転生をしており、その経過の中で異なる人種、民族に生まれ変わってきており、今後もそうなるはずである。だから、次の生でまたアングロサクソンに生まれるとは限らないのである(その人のカルマによりそうなる場合もあるだろうが)。
 この事実を知った上であえてアングロサクソンの支配を永続化しようという者は、対抗する霊的勢力にまさにその身を献げた者であろう。

 最後に、ロシアにおけるボルシビッキ革命に関連して述べたい。それによりソ連が誕生したものの、既にそれは崩壊したのだが、こうした背景にも、英米のエリート(ブラザーフッド)の思惑があるようである。
 ボルシビッキは、マルクス・レーニン主義による暴力革命を進めた勢力である。それにより社会主義国家を打ち立てたのだが、実際には、社会主義にも色々あり、暴力革命によらず、漸進的に議会政治で社会主義を実現しようという勢力もある。実際のソ連の国家は、全体主義的であったと思われるが、社会主義といっても、個人の自由を尊重する立場もあるだろう。実は、シュタイナーは、社会三層化の思想をもっているが、経済においては、友愛を基調とする「社会主義的」システムを理想としたのである。
 さて、ソ連社会主義国家は、裏の歴史的には、「社会実験」として行なわれたとも言われている。ソ連が崩壊したのには、その役割が終わったという意味もあったとされる。しかし、実験とは、その後の「本番」前に試行されるものである。では、その本番とはなんだろうか?
 いわゆる「陰謀論界隈」では、よく「陰謀」を進めているのは「共産主義勢力」であると言われる。社会を共産化しようとするというのである。だから、それらは「左派」「極左」であるとも言われるのだが、これは、上のようなことからすれば実際には正しくないだろう。政治的な右派左派は本質ではないのだ。
 しかし、本来の人類が理想とすべき社会主義とは実際には異なる「陰謀論共産主義」の本質が「全体主義」である社会システムと考えれば、それは当たっているのかもしれない。

 つまり、ソ連等で行なわれた実験の本番とは、今、世界的に進められているかもしれないのだ、「全体主義的な世界システム」の構築として。