k-lazaro’s note

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星座の秘教的起源

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 子どもの頃から星空を見るのは好きだった。といって星座の名前はあまり知らないのだが、昔から不思議に思っていたことがある。星と星を線でつなげて星座ができており、それに対して、その形を表す名前がそれぞれ付いている。星座はどうやって成立したのだろうか。その成り立ちについてよく聞いた説明は、昔、羊飼いが夜空を眺めて空想を膨らませ、当時の神話のイメージをそれに当てはめたのだということである。しかし、星は無数にあり、星と星の結びつけはどのようにでもなる。どうしてこのような結び付きができたのか? 星と星を線で結びつけたその姿も、どのようにも見える。羊であるといっても牛であると言ってもいいではないか。どうして羊がそこになければならないのか? 何となく、納得できないままであった。
 その後、秘教や人智学を勉強し始めて、天界は霊的ヒエラルキーの住処であることがわかった。また人間と宇宙は照応関係にある。きっと、その一つ一つの星座にも秘教的意味があるのだろうと思うようになった。

 今回は、星座(この場合獣帯の12星座あるいは12宮)はどのように成立したのかについてのシュタイナー及び人智学派の説明を紹介したい。
 (私はこの方面も疎いので、誤った解釈があるかもしれないがご勘弁を)

 以前、シュタイナーの学際的宇宙論で、真の太陽系の動きは非常に複雑であることを述べ、それをローランド・シュラップ氏が解明し本を出したと紹介したが、シュラップ氏はこの問題に関する本も出している。以下は、その『獣帯の力の人類の文化史への影響』という本からの引用である。

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獣帯の力の人類の文化史への影響

Der Einfluss der Tierkreiskraefte auf die kulturelle Entwicklung der Menschheit

ローランド・シュラップ ROLAND SCHRAPP

 

  古代から、人類は、獣帯[黄道帯]に沿って並ぶ星座に特別な関心を持っていた。獣帯のイメージは、星空の最も古くから伝承されてきた描写に属する。それはどのように生まれたのだろうか? 古代の人々が、星々を直線で結び、星図にある抽象的な図形を作り、その後に、それに刺激を受けて、空想力豊かに、自然物のイメージで天界を飾ったとするのが、教養ある人間の考えであろう。それが、逆であると言うことはあり得るだろうか。抽象的な図形は、そのイメージから生まれたのであり、イメージが図形から生まれたのではないと。

 以前の人々の魂的生が、現代人のそれと異なっていたと言うことはあり得るだろうか? 以前の人々は本質的にファンタジー豊かで、神々のような霊的存在を信じていたのは、彼らが子どものような空想にふける傾向があったことを示していると、我々は考えている。

 しかし、その様な人々が、ストーへンジやピラミッド、ギリシアの神殿のような、我々が驚く建造物を建造した事実は、議論されていない。当時使うことができた単純な道具で、巨大で幾何学的に正確な建造物がどうやってできたかについて、専門家は未だにその謎を追っているのである。彼らは、現実に疎い空想家ではあり得ない。

 当時の人々は、外界について今日と異なる体験をしていたのではなかろうか? 彼らは、世界とその現象に、物質的感官や抽象的思考だけでなく、魂全体で、より深い心情の力、感情により相対しており、我々が失った知覚を得たのではないだろうか? それは、我々の意識を取り囲む感覚の限界を超えていたのではなかろうか? 一種の霊視? 

 ルドルフ・シュタイナーは次のように語っている。

 

 「今日の天文学が作る単純な図式は、何ももたらさない。宇宙の完全な理解のもと、人間全体をもってこの宇宙に対峙すると、魂の内面に、古い本能的な霊視からイマジネーションが形成されている古い図面に描かれたような、星々の豊かなイメージが生まれる。そして人は、全宇宙のイマジネーションを得るのである。・・・

 今日人々は、本能的な霊視が存在した古代に、いかに人々が世界を眺めていたかを知らない。獣帯の図像から造られたイメージ、様々な図は、ファンタジーから生まれたと考えられている。そうではない。それらは、人々が宇宙に相対したときに、感じられ、観照されたのである。人類の進歩により、それに代わり、理知的な観照が現れてきたのだ。しかし、人は、再び世界についてのその様な観照を獲得しなければならない。それは、しかし、本能的なものではなく、完全な意識を伴ったイマジネーションである。

 その時、人が得るのは、3次元の空間ではなく、ただイメージ的に示すことのできる空間である。直角に交わる3本の線でこの空間を描くと、宇宙の全方向から、表面に力が近づいてきて、外側から、地球の表面にある形あるものに造形的に働くように考えなければならない。

図1 宇宙から働きかける形成力に対するシュタイナーのスケッチ

 そのような見方は、物質的な目で、生き物、特に人間において見られるものから、イマジネーションと呼んだもの-そこでは、物質的人間の代わりに、宇宙が、図像で現れ、人に新しい空間を与える-に移ることにより得られる。」

[シュタイナーの用語では、「イマジネーション」という言葉は一種の超感覚的知覚能力を表す。いわゆる霊視である。]

 この新しい空間を、古代の人々は、3次元に加わる4次元として体験していた。この図像によるイマジネーション的体験は、2次元的である。なぜらなら・・・

 

 「それは、はっきりしない第4のものではない。ある点から、ひっくり返り、4次元は、マイナスの符号を持った3次元となるのである。・・・4次元は、ネガティブな3次元であり、3次元を否定し、空間を本来的に2次元にする。」

 

 この4次元には、宇宙の、造形的エーテル的形成力の他に、我々の感情世界も属する。

 「感情世界は、実際、3次元的に広がっているのではなく、2次元的に広がっている。」

[感情的世界は、人の心魂が活動するアストラル領域である。]

 

 従って、感情を、3次元的外界に向けられた5感で知覚することはできないのだ。魂的なもの、あるいは形成力的なものを知覚するには、魂的感官が必要なのだ。我々は、数千年の時を経て、それをなくしてしまったのだ。

 天界の12の方向から、地球とその住人に様々な力が働きかけている。古代の人々は、古い霊視の力により、この諸力を、感覚(感情)的に区別し、12の2次元のイメージからなる円環の中に内的に体験し、観照したのだ。目に見える12の星座は、空間の12の力の方向の、感じ取られ、イマジネーション的に観照されたイメージの間の境界を示すものとして、後に、用いられたのだ。シュタイナーは、語っている。・・・

 

 「獣帯によりマークされる宇宙空間の部分を目で把握することにより、ただ空間的なもののみを考えてみることにしよう。獣帯の白羊宮、金牛宮・・・の方向に向いて、そこに見上げる天界の方角を扱うのである。見ることのできる宇宙として現れている空間がどのように、区分できるかを先ず見るのである。当該の獣帯の星座は、ただ、我々が空間をどの方角に区分しようとしているかを示す印として示されるのである。

 この方角により区分された空間は、空虚な空間ではない。至る所に力の線、力の方角があるのだ。そしてそれらは、同じではなく、互いに異なったものなのだ。人は、イマジネーション的な魂の体験に昇れるなら、その違いを感じることができる。我々を取り囲む空間は、[一様ではなく]非常に異なった仕方で、我々に働きかけているのである。」

[「境界を示すもの」としての星(星座)については、後に、具体的に説明される。] 

 シュタイナーは、イマジネーションという言葉を、4次元、あるいはエーテル界にある印象(感覚)を可能にする意識段階を示すために使っている。そこには、人が、それに対応して感取できる魂の実質により、イマジネーション的に、即ち、イメージの形で観照することができる、形成力が働いているのである。それは、宇宙の周辺から地球に作用しており、植物相に対して、一年の内に全く異なる特性を与えている。

 12の方角は、植物相に影響を与えるだけでなく、1年の周期に調和して変化する人の魂の魂的感覚(感情)にも作用する。さらには、連続する時代や文化に対して、それらにそれぞれ特有の性格を与えることにより、働きかけている。これには「春分点」が特別な役割を果たしている。毎年春分に太陽がとおる、黄道天の赤道の公転が重要である。反対にあるのが秋分点で、これらは不動なのではない。地軸の回転により、約72年に1度、獣帯を後退していく。春分点の歳差運動である。

 

図2 天の赤道黄道が交わる場所としての春分点 ※

※シュタイナーによれば、太陽と地球、惑星の軌道はレムニスカートである。様々な力が統合されて、楕円軌道が生まれている。この観点からは、春分点秋分点は、太陽と地球の二つのレムニスカート軌道の中間点における天の赤道黄道の交点となる。[この太陽系のレムニスカート運動について、シュラップ氏は別の本で詳述している。]

 

 天界の獣帯のイメージ(星座)の空間と勢力範囲は全周の12分の1、360度のうち30度を占めるので、一つの星座が、後退して先行する星座の勢力範囲に入るまで、太陽は、30×72(太陽が黄道上を1度動く年月)で、2160年を要することとなる。人類にとっては、それは、新しい時代、新しい文化段階の始まりを意味する。

 獣帯をとおる太陽に関心が持たれるようになったのは、いつだろうか。シュタイナーによると、占星術天文学の起源は、紀元前6000年の中頃である。それ以前の時代においては、人間の内面のイメージ的生がまだ強烈で、明瞭で生き生きとしており、代わりに、感覚的知覚は、色あせており、影のようであった。内的に体験された魂的霊的体験が現実で、外的世界は、ただの見かけ、マーヤ(幻影)であった。当時、春分点は、巨蟹宮をとおっていた。当時の人は、全く感情の中で生きていた。最も進んだ人々は、インドで、氷河期の後の最初の文明を築いていた。

 紀元前6000年の中頃に、春分点は、双子宮に移動し、インドから西、歴史以前のペルシアで、外界が始めて評価されるようになり始めた。物質的外界と魂的霊的内界が、二元的に相対するようになった。人の体験は二元的になり、光と闇、日中と夜、過去と未来がテーマとなり、文明の指導者がそれを指導した。大地と天も、二元的に体験された。当時、太陽が春分の時にそこにあった天界の方角から、人間の地上の姿のイメージを魂の中に生じさせ、それも男と女という二様の仕方で、一対の人間として示す力が働いた。この星座の、後に「双子」と呼ばれた、本源的な描写は、中世まで保持された。

アトランティス文明の滅亡後、人類の文明はインドから再び始まる。次がペルシアであるが、これらの歴史的資料は残っておらず、いわゆる歴史上のインダス文明やペルシア文明とは別のものである(その先祖といえる)。]

 天界の反対の方角からは、天界を故郷とする、魂的霊的人間の内的イメージを、弓と矢をもったケンタウルスの姿で呼び起こす力が働いた。それは、後に、射手とよばれた。その下半身は、人間の魂の中の、大地と闇の神であるアーリマンを示す。上半身は、光と天界の神、アフラ・マズダあるいはオルムズドの影響を表現している。アフラ・マズダの外的表現は、天の星に見ることができるので、この時代の最も偉大な指導者、最初のゾロアスターは、最初の天文学を創始した。

 

ゾロアスターは、感覚世界の背後に、絵文字を見ていた-特に、天界の宇宙空間にある星々はグループにわかれてそのようになると。紙の上に文字があるように、星界として周囲に広がるものの中に、霊界から我々に語りかける文字を見ていた。そして、霊界や、星々の秩序により我々に与えられる印に精通し、神霊達がいかに外界の空間に創造行為を書き込んでいるかを読み解き、解釈する技術が生じた。」

[ここにいうゾロアスターは、やはり現在その名で考えられている歴史上の人物ではない。彼は、幾度も転生を繰り返し、人類を指導してきた霊的指導者であり、いわばその最初期のゾロアスターである。]

 彼らに最も重要だったのは、世界に被造物を創り出したアフラ・マズダであり、アフラ・マズダは、天界に見かけのものとして円環を描いた。この円環は、アフラ・マズダが、全世界においてどのように働いているかを人々に示すために置いた絵文字の言葉である。それは、獣帯、黄道12宮、自分自身に戻っていく時の表現である。時の一つの枝は未来に向かい、もう一つの枝は過去に向かう。後に獣帯となったのは、ザルアナ・アカラナである。

 

[ザルアナ・アカラナ:Zaruana Akarana(ZeruaneAkareneまたはZurvanAkarano 、「無限または創造されていない時間」)は、両性具有の原始神としてズルヴァン(ペルシャ語のズルワン、アヴェスタン:zrvan「時間」から)とも呼ばれ、特にズルヴァン教で受け継がれてきたように、後のペルシャ神話によると、創造されていない時間であり、同時に至高で最も原始的な神で。ズルヴァンはしばしば、ライオンの頭と翼と蛇を足に巻きつけたひげを生やした男として描かれている。ズルヴァンの子供たちは双子の光の神アフラ・マツダと闇の霊アーリマンである。アーリマンは長子に支配権が落ちると考え、早産を強要したが、ズルヴァンは彼の犠牲を拒み、アフラ・マツダは天の王に昇進した。しかし、アーリマンは冥界に追放され、そこで9000年間大蛇として支配した。黄道帯はザルアナ・アカラナの外的の表現である。12の霊的力、アムシャスパンドはその中で働き、そのうちの7つは光の側に傾き、5つは暗い側に傾いている。一緒に彼らは[人の]頭の12の神経対の附属物を形成する。【アントロウィキ】]

 

 それは、光の神霊、オルムズドが描いた、自分の中に自身を見いだす時の線である。獣帯の星座をとおる太陽の軌道は、オルムズドの活動の表現であり、ザルアナ・アカラナは、獣帯に自分のシンボルを持っている。基本的に、オルムズドとアフラ・マズダがそうであるように、ザルアナ・アカラナと獣帯は同じ言葉である。「獣帯を通る」ということには、二重のものが織り込まれている。一つは、日中における太陽の運行で、夏に完全な光の力を送っている。そこには、オルムズドの光の領域から、霊的力も流れている。日中や夏にオルムズドが通る獣帯のこの部分は、アーリマンに邪魔されずに働いていることを示している。これに対して、地平線の下にある獣帯の星座は、アーリマンが通る闇の国を象徴している。」

 

 それぞれの惑星領域は、ある霊的存在のグループが滞在している領域である。この地球中心的世界像は、プトレマイオスに引き継がれ、更に理知的に発展した。中世まで維持されたが、16世紀にコペルニクスの太陽中心の世界像により次第に解体されていった。一定の期間、ただ物質的世界に向き合うという使命が人類に課せられたからである。それにより、強い自己意識を発展させる可能性が与えられたのである。

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 以上が今回紹介する星座の起源の説明の前半部分である。
 地球とその生き物には、宇宙から「形成力」が働きかけている。それが来る方向は、12の方角に分割できる。星座とは、その方角を示す印、マークとして始まったのである。星座の示すイメージは当然、その力の性質を表現するものであろう。

 星座のイメージは、ある時、誰かが思いつきで恣意的に定めたのではない。そうなる必然性のもとに定められたのだ。

 後半は次回で。