
前に「惑星胚」https://k-lazaro.hatenablog.com/entry/2026/04/03/085621という記事で、現在の惑星形成の定説とは異なる仮説を紹介した。ドイツの科学者(独立生物学者・地球科学者)であるS.エヴァ・ネッセニウスという方の論考である。それは、月の地球からの放出という出来事にも触れており、シュタイナーの教えとの近さが感じられるものであった。
今回は、上のものと内容が重複するが、彼女の別の本を紹介する。それは、“Evolution and geological planet formation – the biogenic origin of the early continents of the earth” というものである。
また今回も、AIによる要約を参考とする。前回のものよりも詳しく、また意味がくみ取りやすいものになっていると思う。【注】は筆者による。
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⭐ 本の最重要ポイント
この論文は、「地球と月は“生物的プロセス”を含む巨大な惑星胚(planet-embryo)として形成された」という極めて独創的な仮説を提示している。
つまり著者は、惑星形成は“熱い岩石の衝突”ではなく水・コロイド・微生物・バイオミネラリゼーション(生物による鉱物形成)が主役で、地球は初期に「巨大な生物的球体」として成長した。そしてその内部から 月が“出産”されたというモデルを提案しているのである。
1. 序論:従来の惑星形成モデルへの疑問
〈背景:従来モデルの限界〉
惑星形成は「高温の岩石衝突 → 火成岩 →大陸」というモデルが主流である。しかし最古の岩石は変成岩であり、火成岩ではない。変成岩は「元が生物的沈殿物だった可能性」を排除できない。
だが、実験では「岩石衝突で惑星が成長する」モデルが再現できない。
【注:従来のモデルでは、太陽系内の様々な惑星は、太陽の形成後に残ったガスや宇宙の円盤から形成されたと考えられている。今日最も広く受け入れられている仮説は、重力を持つ中心天体のまわりで物質が回転しながら内側へ落下していくことで円盤が形成されるという降着円盤モデルとして知られているものである。このモデルでは、まず宇宙塵が太陽の周囲の軌道を回り始め、次々に衝突して1kmから10km程度の微惑星という塊を作る。その後数百万年間は衝突により、1年あたり数cm程度の速さで成長したとされる。また最初から地球は岩石・金属主体で形成されたのであり、また地球の初期は極めて高温で、表面全体が溶けた岩石の「マグマオーシャン(マグマの海)」状態だったが、その後、数百万〜数億年のスケールで次第に冷却していった。それによりやがて生物が誕生したというのである。
最古の岩石体は、アカスタ片麻岩と言われるもので、変成岩である。ただ最古の鉱物とは、ケイ酸塩鉱物のジルコンで、これは火成岩にも変成岩にも結晶として含まれている。その最古のものは、やはり変成岩の中に含まれているのである。
変成岩とは「元の岩石が高温・高圧で再結晶したもの」で、火成岩由来ものもある。アカスタ片麻岩は「火成岩が変成したもの」であるというのが定説とされる。ではなぜ、変成岩のアカスタ片麻岩が最古とされるのかというと、それより古い火成岩は、プレート運動、再溶融、変成作用により「ほぼ失われてしまった」とされるからである。
これは、「高温の岩石衝突 → 火成岩 →大陸」という惑星形成のモデルが要請することと言えるのではなかろうか。これに対して、鉱物の生物起源を唱えるS.エヴァ・ネッセニウスからすると、変成岩は「元が生物的沈殿物だった可能性」(例えば石灰岩)を語ることはできるのである。つまり最古の変成岩は、無機質な鉱物からではなく、生物から生まれたと考えることもできるのである。
〈著者の問題提起〉
惑星形成の順序そのものが誤っている可能性がある。惑星形成と生命の起源は、同時進行だったと考えるべきである。そのために、惑星形成プロセスを新しい順序で再構成する必要がある。
2. Hypothesis(仮説)
著者は惑星形成を 7段階のプロセスとして再構成する。
それは以下の者である。
Stage 1:Hydrous accretion and chemical evolution(水を含む冷たい星雲での化学進化)
背景
新の天文学では、原始太陽系円盤に大量の水蒸気が存在することが確認されている。これは「地球は高温で形成された」という従来モデルと矛盾する。
著者の主張
惑星は「冷たい水・ガス・コロイドの巨大球体(planet-embryo)」として成長した。 二次エアロゾル・シリカゲル・水が化学反応の場となり、アミノ酸・核酸前駆体が形成される。
著者のモデルでは、その内部構造は次のようにある。
- 外側:氷の殻
- 内側:水蒸気・霧・コロイド
- 深部:シリカゲルが圧力で凝縮し、化学反応の場となる
これが惑星内部の“原始スープ”であり、生命の前段階がここで進行した。
ここで重要なのは、惑星形成と生命の化学進化は 同時に起きたとすることである。つまり、惑星は「生物的な球体」として成長したのである。そして地球と火星は「生物的惑星胚(planet-embryo)」だったのである。
【注:ここがシュタイナー及び人智学者と共通する部分である。宇宙・地球は有機体であり、生命体として誕生したのだ。現在の地球に見られる鉱物質は、言わばその生物の死骸である。】
Stage 2:Biomineralisation(生物による鉱物形成)
背景
極限環境微生物は鉱物を沈殿させる能力を持つ(ピリット、シリカなど)。
【注:鉱物を沈殿させるとは、溶液中のイオンを固体の鉱物として析出させることである。それは、微生物の生存戦略としての「バイオミネラリゼーション(生物的鉱物形成)」であるという。】
著者の主張
初期地球の大陸は、微生物が沈殿させた鉱物の巨大堆積物として成長した。つまり大陸は「生物が作った巨大な沈殿構造」である。
その具体例としては次のようなものがある。
- 硫酸還元菌 → ピリット
- 鉄細菌 → Fe²⁺を酸化してFe³⁺沈殿
- 珪藻 → シリカ沈殿
これらが大陸の基盤を形成したのである。
Stage 3:Great rise in oxygen(酸素上昇と鉱物沈殿の加速)
背景
シアノバクテリアの光合成で酸素濃度が上昇。
【注:シアノバクテリアは、“原核生物の細菌”で、地球最古級の生命の一つとされる。それは“酸素発生型光合成”を行い、地球の酸素のほぼ全てを作った存在だとされる。】
著者の主張
酸素の増加により金属イオンが酸化され、不溶性鉱物として沈殿し大陸がさらに成長した。酸素の増加は真核生物の進化を促進した。
Stage 4:Reef-building organisms and Cambrian radiation(カンブリア爆発の起源)
背景
初期大陸は生物的コロイド構造で、海中に沈んでいた。
【注:生物的コロイド構造とは、ナノ〜ミクロサイズの粒子(タンパク質、脂質、核酸、細胞小器官など)が、水を主体とする媒体中に分散し、安定した“半流動・半固体”の構造をつくっている状態。細胞質、血液、ミルク、結合組織など、生体のほとんどはコロイドである。】
著者の主張
海綿・サンゴなどの礁形成生物が大陸をさらに成長させた。惑星胚内部の多様な遺伝情報が蓄積され、それがカンブリア爆発の多様性の源泉となった。
カンブリア爆発は「突然の進化」ではなく、惑星胚内部に蓄積された遺伝情報の再組み合わせで説明できる、とする。
【注:カンブリア爆発(Cambrian explosion)とは、約5億4千万年前に起きた “動物の爆発的進化” のことで、ほぼすべての主要な動物門が短期間に出現した地球史最大級の生物進化イベントである。これは生命史の中でも特別な現象で、「なぜ突然これほど多様な動物が現れたのか?」という問いは現在も研究が続いている。
なお、「惑星胚内部の多様な遺伝情報が蓄積」ということについては、後述する。】
Stage 5:Embryonic stages until Carboniferous(石炭紀までの惑星胚段階)
背景
地球はまだ巨大で低密度である。大陸は半分水没している。
【注:シュタイナーも、地球は昔巨大であったとしている。最初の段階は土星紀とよばれ、地球は土星の公転軌道範囲にまで広がっていたのである。熱実質のみの状態であり、それがその後、言わば濃縮して小さくなっていったのだ。】
著者の主張
光合成で酸素濃度は史上最大(30%)となる。このため、昆虫が巨大化するなど、生物進化が加速した。地球はまだ「惑星胚」であり、内部に大量の水とガスを含んでいる。
Stage 6:Permian hot phase and origin of the moon(ペルム紀の高温期と月の誕生)
背景
ペルム紀は地球史上でも特に高温期である。
【注:最新の古気候研究では、ペルム紀末の植物化石の炭素同位体分析から、日中の気温が40℃を超え、局所的には地表温度が65℃に達した可能性が示されている。高温化した理由としては、パンゲア形成による乾燥化・温暖化、大陸が一つにまとまったことで内陸が乾燥し、気候は暑く乾いた方向へ進んだ、シベリア・トラップの超巨大火山活動、温室効果の暴走(末期)があげられている。】
著者の主張
地球内部の生物的堆積物が溶融し、体積が減少した。そして体積減少により地球の自転が加速した。密度の異なる内部物質が赤道付近へ移動し、それが地表を破り、月として“ゆっくり押し出された”。遠心力により月材料が浮上し、パンゲアを引き裂いて噴出した(パンゲアの割れ目と対応しており、現在のイースター島付近が起源地)。これが大西洋・太平洋の同時形成と海底拡大の始まりである。
その後の影響として、
- 圧力変化で海洋底拡大が開始。
- 太平洋・大西洋の海洋底は同時に形成された。
- プレートテクトニクスが、月の脱出後に始まった。
Stage 7:Sea transgressions and plate tectonics(海進とプレートテクトニクス)
著者の主張
月の脱出後、地球内部の圧力が変化し、大規模な海洋底拡大が同時に太平洋・大西洋で始まった。プレートは拡大し続け、沈み込みは拡大を相殺できない。
地球は「生物的惑星胚」から「死んだ地質的天体」へ移行した。
3. Findings from the planet-embryo(惑星胚の痕跡)
著者は、以下のような形態学的主張を行なっている。
- 大陸の形は、人間の頭蓋骨の縫合線と対応する。
- 大陸の割れ目は、月が通った“産道”に対応する。胎児の眼窩の位置が月の出現地点に対応している。 Volvox(群体藻類)が娘群体を放出して死ぬ様子や、トビハゼ(Periophthalmus)の眼が突出する様子を、月の出現の象徴として挙げている。
- 地球はかつて巨大な生物的球体(planet-embryo)であり、その形態的記憶が生物の遺伝子に残っている。
- カンブリア爆発の再解釈:惑星胚内部の遺伝情報が再組み合わされ、それが多様な動物門の同時出現を説明する。
⭐ 総合的結論
1. 惑星形成は「冷たい水の星雲」で始まり、生物化学反応が同時進行した。
2. 初期地球は巨大な生物的惑星胚であり、内部で生命が進化した。
3. 月はペルム紀に地球内部から“出産”された。
4. プレートテクトニクスは月の脱出後に始まった。
5. 大陸形状と生物形態は惑星胚の形態的記憶を共有する。現在の生物(特にヒト)はその生物学的子孫でもある。
6. 地球膨張論と沈み込みの両立:従来の膨張論は沈み込みを否定して批判されてきたが、Nesseniusは「月出現が両方のきっかけ」とすることで両立可能だと主張。
【注:膨張論の前提は、地球は過去に現在より小さく、膨張によって大陸が引き裂かれた、海洋底は「新しく作られるだけ」で、古い海洋プレートが消滅する仕組みはない(海洋プレートは消滅しないため)としたが、1960年代以降、複数の独立した観測が沈み込みの実在が示した。しかし現在も膨張(海洋底拡大)と沈み込みの根本原因が不明である。つまりプレートテクトニクスは「どう動いているか」を説明するが、“なぜ動き始めたのか” はまだ未解決のまま残っている。これに対して、ネッセニウスは、両方の根本的原因として月の噴出を提示したのである。】
7.既知のプロセスを新しい順序で再配置することで、惑星形成の未解決問題(鉱物の凝集、初期生命の急速な出現、大陸移動など)を解決できる。
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以上がネッセニウス氏の本の概要である。
ここで「大陸の形は、人間の頭蓋骨の縫合線と対応する」と言うことについて更に触れておきたい。これは形態学的に類似が指摘できるということだが、その原因は「大陸形状と生物形態は惑星胚の形態的記憶を共有する」という彼女の仮説により説明されている。
また本文には、「以前は、先カンブリア紀の地球生態系では、多くの初期原核生物が水平な遺伝子移動を行うことができました。遺伝子プールから得られるすべての遺伝情報は、惑星胚の幹細胞に結合・収集されます。内生共生は、細胞核が大量のDNAを保存する真核動物の発達において重要なステップです。多細胞性や頭部形成を伴う分節は、より高度な発達へのさらなるステップです。共腸類は、胃管に匹敵する段階にあります。頭足類や軟体動物のような他の非分節動物門は、神経系の中心を含むため、機能的に頭部とみなせる多くの器官を発育します。分節された動物は、神経系の中心を頭蓋末端に置き、非分節動物から発展します。」という文章があり、この説を補強している。
地球は元々1つの生物(惑星胚)であると考えると、現存する生物はもちろん、鉱物もまたその生命に由来することになる。そして両者ともに、惑星胚の幹細胞に内蔵された遺伝子情報を共有しているので、類似した形体をとったということであろう。
なお、水平な遺伝子移動とは、遺伝子のやり取りが“縦方向(親→子)”でなく“横方向(他個体→他個体)”ということである。先カンブリア紀(約40億〜5.4億年前)は、地球上の生命のほとんどが原核生物(細菌・古細菌)であり、原核生物は遺伝子を自由に交換できたのである。
内生共生とは、「原始的な細胞が別の細胞を取り込み、それが共生して新しい細胞構造を作る現象」ということで、例えば、ミトコンドリア(酸素呼吸のエンジン)や葉緑体(光合成のエンジン)は、古い段階で原始的な真核細胞に取り込まれた細菌が起源とされている。
また上の文章は、かつての動物類の形態が人間の肉体に統合されてきていることを示唆していると思われる。
大陸の形と人間の頭蓋骨との類似についてのこのような説明は、仮説的にはありうるのだろうが、納得するにはまだハードルが高いように思われる。これについては、おそらく本来はエーテルなどの超感覚的世界を前提にしなければ説明は難しいのではなかろうか?
鉱物の生物起源については、このブログの記事「岩石と鉱物は生あるものから生まれてきた」https://k-lazaro.hatenablog.com/entry/2022/01/25/084438で取りあげられているので、そちらも参照してほしい。
これは、ヴァルター・クルースWalther Cloos氏の『The Living Earth. The Organic Origin of Rocks and Minerals』を紹介したものである。クルース氏は、一昔前の世代の研究者になるが、最近の研究者にはドイツの人智学派の地質学者ダンクマール・ボッセDankmar Bosse氏がいる。
ボッセ氏は、地球と月の分離についても述べており、このブログでも既に取りあげている(https://k-lazaro.hatenablog.com/entry/2022/03/04/090036)。
月の生成に関する現在の科学的コンセンサスは「巨大衝突(ジャイアント・インパクト)仮説」で、これは、約45億年前、火星サイズの原始惑星 テイア(Theia)が原始地球に衝突し、その破片が地球周囲に円盤を形成、数百〜数千年で月へと集積したというモデルである。
これに対してネッセニウス氏やボッセ氏の主張は、分裂(fission)説に分類されるだろう。この説は、学問的にはもともと「高速自転した原始地球が赤道付近から物質を放出し、それが月になった、太平洋盆地は「その傷跡」である」とする19〜20世紀初期の仮説だが、現在の主流科学ではほぼ完全に否定されているという。それは、必要な自転速度が非現実的(地球がほぼ破壊されるレベル)、角運動量が説明できない(現在の地球‐月系の運動量は分裂では再現不可)、太平洋盆地は地質学的に若い(月形成の痕跡ではない)などの理由からである。
ネッセニウス氏は、月の分離はペルム紀に起きたとしているので、上の「太平洋盆地は地質学的に若い」という点はクリアーできると思われる。ボッセ氏によれば、シュタイナーが月の分離が起きたとするレムリア時代中期は古生代に相当するので、月の分離はペルム紀に起きたとするネッセニウス氏の主張と一致する部分があるようである。
シュタイナーによれば、月の分離は偶発的な単なる物理的現象ではない。性の分離などがそれにより生じており、人類の進化と密接に関連する出来事であった。それは霊的ヒエラルキー達によって起こされた必然的な出来事であったのだ。
なお、シュタイナーによれば時間の進み方は昔と今では異なっている。単純に現代のスケールを原始の時代に当てはめることはできないのである。
ネッセニウス氏は、ボッセ氏と異なり、この本ではシュタイナーの名を出してはいない。突飛な点はあるものの、あくまで科学的な知見に基づき科学的推論により自説を論じている。ただ人智学系の研究者の研究を知らないわけではないようである。
ちなみに、ネッセニウス氏のこの本(論文)は、「ミュンヘン大学(LMU)の科学運営委員会によって選ばれ、その一部は、2012 年の国際会議「Planet Formation and Evolution of Planetary Systems(惑星形成と惑星系の進化)」において、ポスター発表として提示された」と記載されている。
これは、日本では到底考えられないが、この論文がドイツでは学術的な評価を得ているということである。この分野で、新たな潮流が生まれているということだろうか。
既に量子物理学の世界においては従来の常識が通用しなくなっている。新たな知見が生まれ、単純な機械論的世界観の限界が認識されるようになってきているのである。先端の科学においてはそれまでの世界観を乗り越えようとする胎動が生まれているようである。
それは、このブログの一つのテーマである、「神秘学と科学の統合」が進んできていることを示しているのかもしれない。




