k-lazaro’s note

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影のブラザーフッドーロシア問題の背景ー ②

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スカル・アンド・ボーンズのメンバー ○で囲んでいるのがパパ・ブッシュ


 前回に続き、セヴァク・ガルベキアン氏の論考「影の兄弟達」の後半を紹介する。前半では、歴史の影でうごめく影のブラザーフッドについてのシュタイナーの考えが示された。後半では、世界で実際に活動する諸組織との関係が考察される。

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シュタイナーと現代の陰謀論

 シュタイナーが描く秘密の兄弟団を概観したところで、次に、彼の視点が、先に述べたより一般的な陰謀論とどのように関連するかを示してみたいと思う。本誌の読者には、ビルダーバーグ・グループ、外交問題評議会、三極委員会などがお馴染みであろう。また、イェール大学の秘密結社「スカル・アンド・ボーンズ」は、陰謀論分野の研究者によく知られた存在である。

  後者は、2004年の米大統領選で共和党民主党の候補者が、この高級クラブのメンバーであることを認めたことで、最近脚光を浴びるようになった。

※ 以下に記されるように、現職の共和党ジョージ・W・ブッシュ民主党ジョン・ケリーが戦った選挙である。二人はともに、イェール大学の秘密結社「スカル・アンド・ボーンズ」のメンバーであった。ここにも、アメリカの「2大政党制」の真の姿が垣間見える。

 スカル・アンド・ボーンズは、1年に15人の学部生しか入会できない小さな学会であり、常時800人ほどの会員しかいないのだから、世界で最も強力な地位の候補者2人が(総人口2億9300万人の中から)会員であるという事実は、非常に驚くべきことだ。

 ジョージ・W・ブッシュスカル・アンド・ボーンズの会員であることは以前から知られていたが(父親のジョージ・ブッシュ・Sr(シニア)や祖父のプレスコット・シェルドン・ブッシュもそうだった)、民主党ジョン・ケリー候補も会員であることが分かったのは、ある種の驚きであった。

  (ケリー候補は、テレビでブッシュ候補との関係について質問されたとき、緊張して笑っていた。"お二人ともスカル・アンド・ボーンズのメンバーだったそうですが、それで何がわかるのですか?"と聞かれたのだ。と聞かれ、「うん、あまりない」と答えたのである。)

 スカル・アンド・ボーンズの主要な研究者であるアントニー・C・サットンによれば、この学会は1833年に初めて設立された。エール大学の敷地内にあるその「墓」で密会するメンバーは、グループの儀式や活動について秘密を守ることを誓わされている。サットンは、その活動や哲学について、哲学者ヘーゲルに基づく「弁証法的」プロセスがスカル・アンド・ボーンズの思考の中心であると述べている。

※ ヘーゲルの「弁証法」は、対立する事物や命題が「否定」を通じて、新たな、より高次のそれへと再生成されると説く。対立する二者を「正(テーゼ)」、「反(アンチテーゼ)」と、両者の否定から生まれる高次のものを「合(ジンテーゼ)」と呼ぶ。東西冷戦の一方の旗頭であったソ連の誕生にブラザーフッドの働きかけがあったように、このような対立は、意図的に生み出されることがある。

 特に、20世紀における極左・極右の政治団体(主に共産主義者ナチス)への資金提供や発展に寄与してきたことを証明しようとしている。スカル・アンド・ボーンズの人類の発展に関する広い視野から見ると、左翼と右翼はヘーゲル弁証法的プロセスの二つの部分と見なされ、一方の政治的翼が「テーゼ」を、他方が「アンチテーゼ」を表しているのである。

 この二つの側面は、互いにぶつかり合い、戦いながらも、最終的には融合して「統合」を形成する。サットンによれば、スカル・アンド・ボーンズが目指しているのは、この「統合」である。対立をコントロールし、操作することで、結果(統合)をコントロールするのである。

 興味深いのは、サットンが最初にスカル・アンド・ボーンズの解釈を発表したのが1980年代半ばであったことだ。当時、彼はこのグループが「新世界秩序」(NWO)のために働いているものとして引用していた。このNWOは、政治的な左派と右派の合成の産物であるとしていた。東欧諸国の共産主義が崩壊し、西側資本主義が勝利した直後、フランシス・フクヤマがその名著で「歴史の終わり」と呼んだ「新世界秩序」という言葉をジョージ・ブッシュSr.が公のスピーチで使うようになったのである。

 この事実は、サットンの読みに状況証拠を与えるものである。仮にサットンの読みが正しいとすると、人類は今、西側、特に米国が主導するNWOの誕生という「統合」の時期に生きていることになる。(そして、共産主義対資本主義を西洋対イスラム原理主義に置き換えるような新しい「弁証法」が突然出現しても、サットンの分析の信奉者には不思議ではないだろう)。

 アントニー・サットンのスカル・アンド・ボーンズに関する一連の小冊子は、「教団の紹介」から始まり、彼は、一般に陰謀と関連づけられるにもかかわらず、外交問題評議会や三極委員会のような組織は究極的には秘密ではなく、多数の一般会員がいることを指摘している。

 同様に、ビルダーバーグ会議が報道機関や一般に公開されていないにもかかわらず、毎年開催される非公開の会議に参加する人々の名前が隠されていないことも付け加えておこう。(1999年にポルトガルのシントラで開催された会議の議事録は、インターネット上に流出して公開されたほどである。上記のグループのメンバーのリストは、ロバート・ゲイロン・ロスの「エリート、フーズ・フー」、「ビルダーバーグ、外交問題評議会、三極委員会、スカル・アンド・ボーンズ協会のメンバー」で見ることができる)。

 サットンは、上記のような組織はより大きなメンバーの「外輪」を形成し、スカル・アンド・ボーンズのような組織は、本当に秘密のグループの「内輪」の一部を形成し、その中にさらに「内核」、つまり「意思決定の核」が存在し、それは完全に人目につかない、つまり本当に隠された(文字通り、「オカルト」)ままだと示唆している。これは妥当な仮説である。例えば、ビルダーバーグ会議について知られていることから、その本質的な動機は、ハイレベルなネットワークと若い才能の育成を通じて、西洋資本主義プロジェクトを推進することにあると推察される

※ 現在、「陰謀論界隈」を賑わしているWEF(世界経済フォーラム)にも若手の養成機関「ヤング・グローバル・リーダーズ」があり、ドイツのメルケル前首相やフランスのマクロン大統領など各国の政治指導者がその出身だという。

 言い換えれば、グローバル化した世界を欧米、特に米英を中心とした英語圏の人々が経済的、政治的、文化的に支配するために活動しているのである。(ビルダーバーグ会議には世界中からゲストが参加するが、北米とヨーロッパに重点が置かれており、その指導者はアングロサクソン系である)。

 ビルダーバーガーについて知られるところでは(多くのことが公にされているが)、それ以上の陰謀はないように思われる。スカル・アンド・ボーンズのようなグループ(サットンはスクロール・アンド・キーのようなグループもあると推論している)は、その存在とメンバーが十分に文書化されていることから、完全な秘密ではないようである。サットンによれば、これらは「中核」であり、より公的なグループと同様の目的を持つが、より焦点を絞った、意識的に保持された目標を持っている。

 ビルダーバーグなどとは対照的に、真の秘密結社は通常、手の込んだ入会の儀式を行い、共通の事業の重要な部分として儀式を用いている。シュタイナーの言う兄弟団も、すでに述べたように、秘密主義と儀式というメーソンの原則の上に成り立っているが、一般の人々からは隠されている。

 上記のグループとの関連では、このような真にオカルト的な兄弟団が、サットンの言う内なる「意思決定」コアの一部を形成している可能性は十分にある。とはいえ、サットンが指摘するように、大規模なグループのメンバーのほとんどは、裏工作や陰謀を全く知らないだろうし、スカル・アンド・ボーンズのメンバーの多くもそうだろう

  この仕事は、秘教的な知識と理解を持つ管理者、つまり「秘儀参入者(イニシエート)」に任されることになる。シュタイナーによれば、彼が言及する特定の兄弟団は、英米の支配を維持するという意識的な目標を持っているだけでなく、真の秘教的洞察力、すなわち前述した進化のサイクルの理解によって、この目標を補完しているのである

 上記のスケッチは、ビルダーバーグのような公的グループ、スカル・アンド・ボーンズのような秘密グループ、そしてシュタイナーの言うオカルト結社がどのように相互作用し、共存しうるかを理解するのに役立つ枠組みを与えるものである。この意味で、真のオカルト組織は、政治的に活動する個人と組織とが交差する、より大きなグループの中心的なインスピレーションとなるであろう。

 このような複雑な図式は、現代生活のあらゆる側面を支配する巨大な陰謀を生み出したとされる、単一の万能の「イルミナティ」という漠然とした考えよりも説得力があると私は考えている。

※ メンバーの名前の知られているような組織は、当然、そこに秘密は存在しているにしても、全体を指揮する中核ではない。そこにいるのは、おそらく名も知られていない者であろう。フリーメーソンについて言えば、そもそも、シュタイナーによれば、フリーメーソンの起源は人智学にも共通する霊統にあるとしており、本来は、人類の霊的進化に貢献する組織であったのだ。しかしいつの時点でか、悪意を持った勢力の力が及び、本来の使命を見失ったと思われるのである。従って、現代のフリーメーソンに対して、シュタイナーは、批判的である。だが、やはり現在の俗化した末端の組織のメンバーには、陰謀論的な目的はないと思われる。
 また、ブラザーフッドも様々存在しており、すべてをイルミナティでくくることはできない。そうした主張は、むしろ実態を隠すものである。

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 ガルベキアン氏の論考は以上である。「陰謀論」の中で語られる組織の中には、実態はその様な団体でないものもあるだろうが、その多くはやはり何らかの「陰謀」に関わっているのかもしれない。それらの団体には共通するネットワークがあるように思われるのだ。ガルベキアン氏やシュタイナーによれば、更にその奥の院があり、そこにはイニシエーターが存在するようである。