k-lazaro’s note

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月の分離

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左:月の表側 右:月の裏側

 「月は誰が造ったか」で、月が地球から分離して地球の衛星になったというシュタイナーの説を紹介したが、今回は、それに関連する記事である。

 この論稿の著者はDankmar Bosse氏で、彼は、ドイツの人智学派の地質学者である。2002年に『地球と人類の相互進化:生きる地球の地質学と古生物学のスケッチ』Die gemeinsame Evolution von Erde und Mensch. Entwurf einer Geologie und Paläontologie der lebendigen Erdeという、シュタイナーの認識に基づく地球の地質史の本を出版しているが、今回紹介する文章は、2021年に出版されたBosse氏の、前著と同様のテーマについてのエッセイをまとめた本『地球の歴史に関するエッセイ』(英訳)からとったものである。

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月の分離 「地球の歴史に関するエッセイ」より

  地球の歴史において、地上の生命がほとんど絶滅した時代がある。19世紀に、この断絶は、前カンブリア、古生代中生代新生代の間の境界として定義された。地球は砂漠化し、表面の岩石は巨大な大陸プレートに硬化した。全地球があまりに早く硬化する危険が生まれた。

 シュタイナーは、人間が更に進化するためには、硬化と分解の力のバランスが必要になったと述べている。「固体地球の実質に、永続的に硬化するよう作用するすべてのものが分離された。」 下図が示すように。「その時、月が地球から分離されたのである。」「生きている地球が形成される中で、そこから子孫が宇宙に出て行く時が来たのである。突起が発達し、萎縮し、ついに分離したのである。月はかつて地球の中にあったのだ。月の存在だけが、地球に死を、鉱物をもたらしたのだ。今日の植物、動物、人間が今日の形を得ることができたのは、このためである。他方、月はその外側に、地球の内部にあるものをもっている。」

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上:シュタイナーのスケッチ 下:著者の図 生命圏はドットで表示されており、そこから実質は二つの極に集まる。黒いラインは、固い地殻に凝集し、結晶化したことを示す。

 月への飛行によりとられた岩石のサンプルは、この絵を補強している。それは、海の下と上層マントルに見られる玄武岩である。火星から木星までにある固い天体は、このようにして生まれた。月が地球からかつて離れたと言うことは、その小さな引力によっても、地質学的には確実である。そのプロセスの途中に月に落ちた、中間のエリアの残存する塊は、月の海に巨大な衝突を生じ、それらの間に最大の重力を形成した。それらはすべて、地球に向いている側にあり、月の海の領域の起源を隕石の衝突に帰すのであれば、謎のままとなる。それらのほとんどは、月の地球に向いた側が形成される間の比較的短い時間の内に、形成されたのである。隕石の衝突とすれば、それらは主に裏側に落ちただろうが、そこは月の陸地領域で、衝突クレーターはあまり見られない。今日、月は、それとかつて一緒だった片方の面のみを地球に向けている。月には、水も大気もなく、クレーターのある玄武岩の死の風景があるだけである。物理的な原因に基づく今日のすべての仮説は、天体が地球に衝突し、別の側から月を飛び出させたという現象を、特に、衝突と射出のポイントがどこかにあることが確認できるはずであることから、否定している。月を組成する玄武岩は、火山により、卵の殻のように薄い地球の固い地殻を突き破って出てくる。そしてその殻は、大洋の中心にそって裂けており、火山により穴が開けられている。今日、私たちは、破壊的で予測困難、地震と結びついて不規則な火山活動の特徴を通して、月の力の本質を直接体験することができる-秩序だった宇宙における特別なケースである。固まっていく溶岩の塊は、強力な効果の力を示している。この力が、人類と地球に対して残っていたなら、何が生じていたかを推量することができるだろう。

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 小さなクレーターは裏面にも無数にあり、これらは隕石の衝突によるものであろうから、Bosse氏の言う、「衝突クレーター」とは大きな隕石(天体)の衝突によるクレーターのことを言っていると思われる。

 月の海は、濃い色の玄武岩で覆われた月の平原で、月の地表の16%を占めており、月の表と呼ばれる地球を向いている側に多くの月の海がある。一方で、月の裏側にある海としては、モスクワの海、賢者の海などがあげられるが、その面積は表側の海と比べて圧倒的に少ない。月の海が表側に偏って存在する原因については、様々な説があるが、詳しくは分かっていないようである(ウィキペディアによる)。

 この海の形成について、Bosse氏は、地球から月が離れる際に、餅をちぎる時に一旦その間の餅が伸びてからちぎれるように(上のシュタイナーの図のように)、地球と月の間でひっぱられた物質が、いくつかに分裂し、それらが月に落下することによりできたと言っているのだろう。

 天体の衝突なら、地球に向いた表側でなく、裏側の方がそれが起きる確率は大きい。というか、表側にこのような大きな跡を残す天体が、地球と月の間にうまく回り込んで衝突するというようなことはほとんど考えにくいのではなかろうか?

 (この文章を訳していて少し意味がとりにくい部分あり、おそらくこういうことかと言うことで上に補足説明した。原文はドイツ語であり、二重訳になっているためかとも思うが、原書に当たれていないので、これで勘弁いただきたい。)

 なお、Bosse氏のエッセイについては今後もいくつか紹介する予定である。